

2026年度生化学川柳第十三週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week13
先週はバイオシグナリングについて学びました。 私たちの体では、細胞の内外で起こるさまざまな変化を適切な生命現象へと結び付けるために、精巧なシグナル伝達ネットワークが構築されています。 細胞膜は疎水性の脂質二重膜からできているため、水やイオン、多くの情報伝達分子はそのままでは膜を通過できません。そのため細胞は、細胞膜上に配置された受容体を利用して外界からの情報を受け取り、それを細胞内へ効率よく伝達しています。 細胞膜の面積や細胞質の体積には限りがあるため、細胞は必要な種類の受容体だけを細胞表面に配置し、その後の細胞内では共通のシグナル伝達装置を利用します。また、細胞内では複数の酵素やタンパク質が連続して活性化されるシグナルカスケードを形成することで、わずかな刺激を何万倍にも増幅し、確実な細胞応答を引き起こします。 今回の講義では、シグナル伝達系に共通する6つの特徴について学びました。受容体は特定の分子だけを認識する「特異性」、少量の刺激を大きな応答へと変える「増幅」、複数の経路を組み合わせる「モジュール性」、不要になったシグナルを停止する「脱感作」


2026年度ゼミ旅行@箱根、伊豆戸田、沼津、スポッチャ
木曜日、金曜日の2日間にわたり、今年度の研究室ゼミ旅行を実施しました。 今回の目的地は、静岡県沼津市の戸田(へだ)。 今年はB4の皆さんが中心となって企画を進めてくれ、移動ルートや宿泊先、食事、レクリエーションまで、盛りだくさんの内容となりました。 初日の朝、研究室メンバー23名が大学に集合し、4台の車に分乗して出発です。 私たちのグループは箱根を経由するルートを選び、都心を抜けて一路箱根路へ向かいました。 最初に立ち寄ったのは、箱根山麓にある歴史ある「甘酒茶屋」です。 茅葺き屋根の古民家を利用した趣のあるお店で、名物の甘酒やかき氷を楽しむことができます。 私は、この時期だけ提供される期間限定の「冷やし甘酒」と、温かい味噌おでんをいただきました。 ひんやりとした甘酒は優しい甘さで、旅の始まりにぴったりの一杯。 味噌おでんも素朴で味わい深く、暑さの中でもほっと一息つくことができました。 一方、学生たちは色鮮やかなかき氷を注文していました。 つぶつぶいちごや、とろりん餅などのトッピングも美しく、見た目にも華やかです。 小腹を満たした後は、芦ノ湖畔にあ


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 伊豆から眺める今週の生命科学
今週は、木曜・金曜に研究室ゼミ旅行で静岡県沼津市戸田に来ています。 そのため、いつものお茶机周辺ではなく、出張先からのリモート開催として金曜CNSカフェを行いました。 今週はNature誌とScience誌から8報を選びました。テーマは、人工電気シナプスによる神経回路編集、樹状突起での並列計算、RNA誘導ヌクレアーゼの設計、RNA修飾酵素NSUN2、リボソームE部位を標的とする抗生物質、HuR分子グルー、αKGとDNA修復、そして腫瘍内三次リンパ様構造です。 戸田の海を眺めながら、いつもとは少し違う雰囲気で、今週の生命科学を見ていきました。 一見すると幅広い内容ですが、共通しているのは、生命システムを「読む」だけでなく、「つなぐ」「設計する」「分解する」「再構成する」という視点です。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:人工電気シナプスで脳回路を編集する Long-term editing of brain circuits using an engineered electrical synapse(Nature) 脳の情報処理は、異な


2026年度生化学川柳第十二週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week12
先週は、生体膜と物質輸送について学びました。 私たちの体を構成するすべての細胞は、厚さわずか約5 nmほどの生体膜によって外界と隔てられています。非常に薄い構造ですが、細胞の形を保つだけでなく、物質の出入りや情報伝達など、生命活動に欠かせない多くの役割を担っています。 生体膜の主成分はグリセロリン脂質です。リン脂質は、水になじみやすい「親水性の頭部」と、水を避ける「疎水性の脂肪酸の尾部」をあわせ持つ両親媒性分子です。そのため、水中では自然と尾部同士が集まり、脂質二重膜を形成します。この性質によって、細胞は外界と内部を隔てる膜を自発的につくることができます。 さらに、真核生物の細胞膜にはコレステロールが含まれており、膜の流動性や安定性を調節しています。また、膜表面に存在する糖鎖は、細胞同士の認識や血液型の違いにも関わっています。こうしたわずかな構成成分の違いが、それぞれの細胞や組織に固有の性質を生み出しています。 しかし、生体膜の内部は疎水性であるため、ナトリウムイオンやカリウムイオン、ブドウ糖、アミノ酸などの親水性物質は、そのままでは膜を通過する


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー AIが仮説を考え、RNAが治療を導き、光合成装置が哺乳類細胞で働くWntシグナルソーム、KRAS凝縮体、分子接着剤、神経免疫まで
今週も、Cell誌、Nature誌、Science誌から気になった論文を持ち寄り、金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、科学的仮説を提案するAI、Wnt受容体複合体の構造、KRASの相分離、グリコーゲンのユビキチン化、分子接着剤による標的タンパク質分解、ADARを利用したRNA編集、哺乳類細胞への光合成反応の移植、そして抗体と補体によるシナプス除去を取り上げました。 一見すると異なる研究ですが、共通するのは、生命科学の研究対象だけでなく、研究手法そのものも大きく変化している点です。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:AIは研究者の仮説を考えられるか Accelerating scientific discovery with Co-Scientist(Nature) A multi-agent system for automating scientific discovery(Nature) Co-Scientistは、複数のAIエージェントが仮説の生成、批判、順位付け、改良を繰り返し、研究者へ新しい研究仮説を提案するシステムです


2026年度生化学川柳第十一週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week11
先週は、脂質について学びました。 脂質というと、バターや植物油、肉の脂身などを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、生体内の脂質は、エネルギーを蓄えるだけでなく、細胞膜をつくり、情報を伝えるなど、実にさまざまな役割を担っています。 脂質とは、タンパク質や糖、核酸とは異なり、特定の共通構造をもつ物質を指すのではなく、水に溶けにくい疎水性の化合物の総称です。脂肪酸やトリアシルグリセロール、リン脂質、コレステロールなど、さまざまな構造をもつ分子が含まれています。 私たちが食事から摂取する動物性脂肪や植物油の主成分は、脂肪酸を含むトリアシルグリセロールです。脂肪酸は還元度が高く、酸化されると多くのエネルギーを生み出します。また、疎水性で水を伴わずに蓄えることができるため、脂肪は長期的なエネルギー貯蔵に非常に適しています。 脂肪酸には、二重結合をもたない飽和脂肪酸と、一つ以上の二重結合をもつ不飽和脂肪酸があります。天然の不飽和脂肪酸の多くはシス型の二重結合をもち、その部分で炭化水素鎖が折れ曲がります。この構造の違いによって脂肪酸同士の集まりやすさや融


田嶋さん、日野森くん、伊藤くん、お誕生日おめでとう!Happy Birthday, Nana, Mao, & Sho!
本日は、今週誕生日を迎える田嶋さん、日野森くん、伊藤くんの3人をお祝いしました。 まずは、田嶋さんへのプレゼントです。 日野森くんからは、海外旅行が好きな田嶋さんに、最近再び人気を集めている「写ルンです」が贈られました。 スマートフォンで気軽に写真を撮れる時代ですが、旅先でフィルムカメラならではの写真を残すのも楽しそうですね。 続いて、伊藤くんからは某有名ブランドのヘアオイルがプレゼントされました。 袋を見た瞬間から田嶋さんの表情が緩み、開封してさらに喜んでいる様子が印象的でした。 日野森くんと伊藤くんは誕生日が同じ日ということで、お互いにプレゼントを用意していました。 日野森くんから伊藤くんへは、コーヒー豆を保存するストッカーケースが贈られました。 一方、伊藤くんから日野森くんへは、植木鉢のような形をしたユニークなコーヒーフィルターがプレゼントされました。 また、日野森くんにはB4の尾崎くんから、ガラス製のコーヒーグラスとワイングラスが贈られました。 毎日研究室でコーヒーを豆から淹れている日野森くんにとって嬉しいプレゼントです。 そして、今回の


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命の構造・免疫・力を読み解く 膜タンパク質を包む設計分子から、RNAで細胞を選別するCRISPR、肝再生、脳のグリアネットワークまで
今週も、Nature誌とScience誌の最新号から、気になった研究を持ち寄って金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、膜タンパク質を水中で安定化する設計タンパク質、ウイルスのような巨大タンパク質ケージ、RNAを検知して細胞を排除するCRISPR、植物免疫を制御する選択的スプライシング、力を感じて再生する肝臓、フェロトーシスを防ぐ代謝物、脳をつなぐアストロサイト、そして15億年の進化を学習した生成AIまで、幅広い話題がそろいました。 一見すると異なるテーマですが、いずれも生命が「構造」「情報」「力」「代謝」をどのように利用しているのかを明らかにする研究です。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:膜タンパク質を人工タンパク質で包む Membrane protein solubilization and structure determination using de novo–designed proteins(Science) 膜タンパク質は、疎水性の表面を持つため、膜から取り出すと凝集しやすく、通常は界面活性剤や脂質粒子を使って扱いま


2026年度生化学川柳第十週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week10
先週はDNAについて学ぶ2回目の講義として、DNAを基盤とするさまざまな生命科学技術について学びました。 DNAの塩基配列に含まれる遺伝情報を読み解くことで、私たちの体がどのような遺伝子の働きによって制御されているのかを知ることができます。また、特定の遺伝子に生じた変異や欠損を調べることで、遺伝性疾患やがんをはじめとするさまざまな病気との関連を明らかにすることもできます。 DNAの塩基配列を知るためには、シーケンシングと呼ばれる塩基配列決定技術が必要です。また、特定の遺伝子を別の生物に導入したり、大量に増幅したりするためには、DNAを切断し、つなぎ合わせる技術が必要になります。 そこで活躍するのが制限酵素です。 制限酵素は、細菌などの原核生物が、侵入してきたウイルスなどの外来DNAを排除するために利用している酵素です。特定の塩基配列を認識してDNAを切断しますが、このままでは自身のDNAも切断されてしまいます。そのため、細菌は自分自身のDNAの認識配列をメチル化することで、制限酵素による切断から守っています。 遺伝子組換え技術では、この制限酵素を


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命の構造・移動・修復を読み解く色覚オプシンから、電場を感じる細胞、神経細胞のDNA損傷、HIVの核膜孔操作まで
今週も、Cell、Nature、Science誌の最新号から、気になった研究を持ち寄って金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、色覚を生み出すタンパク質の構造、電場を感じて移動する細胞、神経細胞のDNA損傷と修復、細菌同士のタンパク質共有、感染や食事に応答するT細胞など、幅広い話題がそろいました。 一見すると異なるテーマですが、いずれも生命が光、電気、力、損傷、栄養といった情報を受け取り、構造や機能を変化させる仕組みを明らかにしています。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:三色の光を見分ける錐体オプシン Illuminating the molecular basis of human daylight vision(Science) Structural insights into spectral tuning and retinal exchange in cone visual pigments(Science) Cryo–electron microscopy structures of human cone visual
