

2026年度生化学川柳第七週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week7
先週は、糖と糖鎖生物学について学びました。 今回は、台風が通過していく中で、久しぶりのオンデマンド講義となりました。大雨の中、ゼミ室で講義内容を録画・録音しましたが、久しぶりだったためか、1回目の録画では自分のマイクを入れ忘れてしまい、あとで確認すると音声がまったく入っていませんでした。気を取り直して録り直し、オンラインサイトにアップロードできたのは講義開始予定の5分前という、かなりぎりぎりのタイミングでした。画面の向こうで待っているであろう皆さんの姿を思い浮かべながら、私自身もお昼ご飯で糖分補給をしておりました。体の中では酵素がしっかり働いて、午前中に消費したエネルギーを補ってくれたことと思います。 さて、糖はエネルギー源として重要であるだけでなく、細胞表面やタンパク質・脂質に結合した糖鎖として、細胞どうしの認識や情報伝達、免疫などにも深く関わっています。身近な分子でありながら、生命現象のさまざまな場面で大切な役割を果たしていることを見ていきました。卓上の砂糖は非常に安定で、そのままではエネルギーになりませんが、燃やせば炎が上がりますし、食べれ


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 老化、痛み、睡眠、そして生命科学の未来
今週も金曜日の午後、研究室のお茶机で「金曜CNSカフェ」を開きました。 今週は、老化、慢性痛、睡眠、マングローブ林の回復、ゲノム編集、植物免疫、そしてAIやロボットによって変わる研究の未来まで、幅広い話題が並びました。 1品目:老化を遺伝子発現から読む 体の年齢は、カレンダーだけで決まらない Natureの表紙を飾ったのは、哺乳類の老化と死亡率に関わる遺伝子発現パターンの研究です。 年齢というと、生まれてから何年たったかという「暦年齢」を思い浮かべます。しかし、実際の体の状態は人によって異なります。この研究では、げっ歯類、サル類、ヒトの大規模なRNAデータを解析し、老化や死亡率に関わる共通の転写パターンを探っています。 将来的には、遺伝子発現の状態から「体の老化度」や健康状態をより詳しく評価し、抗老化介入や健康寿命の研究に役立てられる可能性があります。 2品目:慢性痛だけを標的にする神経回路 痛みを消すのではなく、つらい慢性痛を抑える 痛みは、本来は体を守るために必要な感覚です。しかし、けがが治った後も痛みが続く慢性痛は、生活の質を大きく下げます


2026年度生化学川柳第六週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week6
先週は酵素について学びました。 私たちの体の中では、数えきれないほど多くの化学反応が絶えず進んでいます。その反応を、必要なときに、必要な場所で、無理のない条件のもとで進めているのが酵素です。ほとんどの酵素はタンパク質からできており、自分自身は消費されることなく、反応の速度を大きく高める触媒として働きます。なお、一部には触媒活性をもつRNAも知られています。 酵素は反応そのものの平衡を変えるのではなく、反応が進むために越えなければならない活性化エネルギーを下げることで、反応を起こりやすくしています。また、酵素が特定の基質を選んで結合すること、補因子や補酵素の助けを借りて働くものがあること、基質が結合することで酵素の形が変わる誘導適合、そして反応速度をどのように調べるかという酵素速度論の考え方にも触れています。 さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。 – 高い山 酵素で楽に 登りきる – アツイとね 酵素もわたしも 失活よ – ホロ酵素 人の手を借り する労働 – 基質(キミ)だけを 選んでしまう 特異性 – 変身だ 誘導適合 君のため...


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 新型コロナ感染の後遺症から植物免疫、ゲノム編集まで
金曜日の午後、研究室のお茶机で「金曜CNSカフェ」を開きました。 今週は、新型コロナ感染の後遺症に関わる自己抗体の話題から、植物のストレス応答、マイクロバイオーム、ゲノム編集、転写制御、RNA輸送まで、幅広い研究が並びました。 1品目:新型コロナ感染の後遺症と自己抗体 感染後に続く痛みや疲労感に、免疫の異常が関わる可能性 新型コロナウイルス感染症から回復した後も、強い疲労感、痛み、集中力の低下、体調不良などに長く悩まされる方がいます。症状は人によって大きく異なり、原因も一つではないと考えられています。そのため、患者さんにとっても、医療者にとっても、理解と対応が難しい問題です。 Cell誌の研究では、新型コロナ感染後の後遺症を持つ患者さんの血液中に含まれるIgG抗体をマウスに移すと、痛みに関連する行動や神経線維の障害が見られることが示されました。これは、少なくとも一部の患者さんでは、自己抗体が神経症状に関わっている可能性を示すものです。 もちろん、新型コロナ感染後の後遺症のすべてをこの仕組みだけで説明できるわけではありません。それでも、「気のせい」


2026年度生化学川柳第五週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week5
先週はタンパク質の機能について学びました。 私たちの身体の中では、実にさまざまな種類のタンパク質が日々働いています。体の形を支えるもの、物質を運ぶもの、異物を認識するもの、筋肉の動きに関わるものなど、その役割はとても多彩です。講義では、球状タンパク質の機能として、分子の貯蔵、運搬、防御、筋収縮、生体反応などがあることを学びました。 その中でも今回は、酸素を運ぶヘモグロビンを中心に、タンパク質がどのようにリガンドと結合し、その結合がどのように調節されるのかを見ていきました。ヘモグロビンは、酸素が1つ結合すると次の酸素が結合しやすくなる協同性を示し、肺では酸素を受け取り、組織では放しやすくなるよう巧みに働いています。さらに、pHや2,3-BPGによって酸素親和性が変化することで、体の中で必要な場所へ酸素を届けやすくしていることも学びました。 さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。 –ヘモグロビン ゆるんだ隙に 酸素イン –一つ乗り 次も続けと 協同性 –高山は BPGで 息つなぐ –離さない ヘモグロビンの 重い愛 -リガンドが ガチ恋してる 受容体


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー GLP-1から植物の温度感知、DNA修復まで
金曜日の午後、研究室のお茶机で「金曜CNSカフェ」を開きました。 この会では、Nature や Science などの一流科学誌に掲載された最新研究を、お茶やコーヒー、お菓子とともに気軽に眺めています。論文を一報ずつ深く読み込むというよりも、「今、世界ではどのような研究が進んでいるのか」を知り、研究室での議論や新しい発想につなげることを目的としています。 今週は、一般にも関心の高いGLP-1肥満治療薬の話題から、植物の温度感知、DNA修復、細菌とウイルスの攻防まで、幅広い研究が並びました。 1品目:GLP-1ダイエットの科学的根拠 肥満治療薬の効き方は遺伝子で変わる? GLP-1受容体作動薬は、肥満や糖尿病の治療薬として大きな注目を集めています。一方で、同じ薬を使っても、体重が大きく減る人もいれば、効果が小さい人もいます。また、吐き気や嘔吐などの副作用にも個人差があります。 今回のNature論文では、GLP-1薬を使用した約2.8万人のデータを解析し、GLP1RやGIPRといった薬の標的に関わる遺伝子の違いが、体重減少の程度や副作用に関係するこ


2026年度生化学川柳第四週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week4
先週はタンパク質の構造について学びました。 タンパク質は、リボソームで合成されたあと、アミノ酸配列に応じて折りたたまれ、二次構造、三次構造、さらに場合によっては四次構造を形成していきます。αヘリックスやβシートといった規則的な二次構造が組み合わさることで、機能をもつ立体構造ができあがっていくところは、タンパク質の面白さのひとつです。タンパク質の構造はアミノ酸配列によって決まり、構造が機能と深く結びついていること、そしてその安定化には疎水性相互作用、水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス相互作用、ジスルフィド結合などが関わります。 タンパク質の中には、球状ドメインを形成して酵素や受容体のようにはたらくものもあれば、ケラチンやコラーゲンのように繊維状の構造をとり、組織の強度やしなやかさを支えるものもあります。たとえばケラチンでは、αヘリックスが集まって丈夫な繊維をつくり、さらにジスルフィド結合がその形を保つうえで重要な役割を果たします。パーマ処理の過程では、ジスルフィド結合を一度切ってから形を変え、再び結び直すことで髪の形を整える、身近なタンパ


葛西くん、お誕生日おめでとう!Happy Birthday, Sota!
本日は、葛西くんのお誕生日をお祝いしました。 B4の田嶋さんからは、極薄ビールグラスとサッポロビールが贈られました。 ビール好きで、さらにビール検定にも合格している、札幌出身の葛西くんにぴったりのプレゼントです。 地元ゆかりのサッポロビールとこだわりのグラスの組み合わせに、贈る側の気配りも感じられました。 なんでも、この極薄グラスはビールのおいしさをより一層引き立ててくれるそうです。グラスの口当たりの軽さも相まって、いつもの一杯がさらに特別なものになりそうですね。 これからの季節、冷えたビールを片手に、涼しさを感じながら楽しむ時間は格別だと思います。 暑くなるこれからの時期にぴったりの、素敵なプレゼントでした。 さて、私はチョコレート好きな葛西くんのために、ラム酒漬けフルーツをたっぷり入れたチョコレートケーキを準備しました。上にはハート形と星形のカラースプレーをあしらい、見た目にも楽しい仕上がりにしてみました。 中のチョコレート生地には、レーズン、りんご、パイナップルを入れています。半生チョコレートのほろ苦さに、フルーツの酸味と甘みが重なり、バラ


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー
本日午後、「金曜CNSカフェ」を開きました。 これは以前紹介したCell、Nature、Science などの一流科学誌に掲載された最新研究を、お茶やコーヒー、お菓子とともに気軽に眺める会です。論文を一報ずつじっくり読むというより、まずは「今、どんな研究が世界で話題になっているのか」に触れてみることを目的としています。 今週のサムネールは、カフェの黒板メニュー風にしてみました。黒板に並んだ「本日のおすすめ」は、メニュー表にあるとおりDICER、RNA ensemble、Cas9 supercoiling、genome writing、Marburgvirus GP、plant resistosome、phage evolution。どれも生命科学の最前線を感じさせる、少し濃いめのメニューです。 以下、メニューの紹介です。 1品目:DICER(ダイサー):RNAを正確に切るための分子のものさし DICERは、RNA干渉という仕組みに関わる重要な酵素です。長いRNAを短く切り、遺伝子の働きを調節する小さなRNAを作ります。 今回の研究では、DICER


2026年度生化学川柳第三週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week3
先週は、これから4週にわたって続くタンパク質の学習の第1回として、アミノ酸、ペプチド、タンパク質について学びました。 生命をつくる生体分子の中でも、最も多く存在し、しかも実にさまざまなはたらきをしているのがタンパク質です。20種類のアミノ酸の並び方や長さが変わるだけで、酵素、受容体、抗体、構造タンパク質など、いろいろな役割をもつ分子が生み出されます。限られた種類の材料から、これほど豊かな世界が広がっているところに、タンパク質の面白さがあります。 今回の講義では、アミノ酸の基本的な構造や性質、アミノ酸どうしがペプチド結合でつながる仕組み、そしてできあがったポリペプチド鎖が折りたたまれて機能をもつタンパク質になっていく流れを学びました。ひとつひとつのアミノ酸の違いは小さく見えても、それらが組み合わさることで大きな違いが生まれ、生命活動を支える分子へとつながっていきます。 そうした内容を踏まえて学生たちに作ってもらった川柳の中から、今回の優秀川柳として次の5句を選びました。 -アミノ酸 二十の個性で 世界成す -水抜けて 固く結んだ ペプチド鎖 -ペプ
