

2026年度生化学川柳第十二週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week12
先週は、生体膜と物質輸送について学びました。 私たちの体を構成するすべての細胞は、厚さわずか約5 nmほどの生体膜によって外界と隔てられています。非常に薄い構造ですが、細胞の形を保つだけでなく、物質の出入りや情報伝達など、生命活動に欠かせない多くの役割を担っています。 生体膜の主成分はグリセロリン脂質です。リン脂質は、水になじみやすい「親水性の頭部」と、水を避ける「疎水性の脂肪酸の尾部」をあわせ持つ両親媒性分子です。そのため、水中では自然と尾部同士が集まり、脂質二重膜を形成します。この性質によって、細胞は外界と内部を隔てる膜を自発的につくることができます。 さらに、真核生物の細胞膜にはコレステロールが含まれており、膜の流動性や安定性を調節しています。また、膜表面に存在する糖鎖は、細胞同士の認識や血液型の違いにも関わっています。こうしたわずかな構成成分の違いが、それぞれの細胞や組織に固有の性質を生み出しています。 しかし、生体膜の内部は疎水性であるため、ナトリウムイオンやカリウムイオン、ブドウ糖、アミノ酸などの親水性物質は、そのままでは膜を通過する


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー AIが仮説を考え、RNAが治療を導き、光合成装置が哺乳類細胞で働くWntシグナルソーム、KRAS凝縮体、分子接着剤、神経免疫まで
今週も、Cell誌、Nature誌、Science誌から気になった論文を持ち寄り、金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、科学的仮説を提案するAI、Wnt受容体複合体の構造、KRASの相分離、グリコーゲンのユビキチン化、分子接着剤による標的タンパク質分解、ADARを利用したRNA編集、哺乳類細胞への光合成反応の移植、そして抗体と補体によるシナプス除去を取り上げました。 一見すると異なる研究ですが、共通するのは、生命科学の研究対象だけでなく、研究手法そのものも大きく変化している点です。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:AIは研究者の仮説を考えられるか Accelerating scientific discovery with Co-Scientist(Nature) A multi-agent system for automating scientific discovery(Nature) Co-Scientistは、複数のAIエージェントが仮説の生成、批判、順位付け、改良を繰り返し、研究者へ新しい研究仮説を提案するシステムです


2026年度生化学川柳第十一週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week11
先週は、脂質について学びました。 脂質というと、バターや植物油、肉の脂身などを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、生体内の脂質は、エネルギーを蓄えるだけでなく、細胞膜をつくり、情報を伝えるなど、実にさまざまな役割を担っています。 脂質とは、タンパク質や糖、核酸とは異なり、特定の共通構造をもつ物質を指すのではなく、水に溶けにくい疎水性の化合物の総称です。脂肪酸やトリアシルグリセロール、リン脂質、コレステロールなど、さまざまな構造をもつ分子が含まれています。 私たちが食事から摂取する動物性脂肪や植物油の主成分は、脂肪酸を含むトリアシルグリセロールです。脂肪酸は還元度が高く、酸化されると多くのエネルギーを生み出します。また、疎水性で水を伴わずに蓄えることができるため、脂肪は長期的なエネルギー貯蔵に非常に適しています。 脂肪酸には、二重結合をもたない飽和脂肪酸と、一つ以上の二重結合をもつ不飽和脂肪酸があります。天然の不飽和脂肪酸の多くはシス型の二重結合をもち、その部分で炭化水素鎖が折れ曲がります。この構造の違いによって脂肪酸同士の集まりやすさや融


田嶋さん、日野森くん、伊藤くん、お誕生日おめでとう!Happy Birthday, Nana, Mao, & Sho!
本日は、今週誕生日を迎える田嶋さん、日野森くん、伊藤くんの3人をお祝いしました。 まずは、田嶋さんへのプレゼントです。 日野森くんからは、海外旅行が好きな田嶋さんに、最近再び人気を集めている「写ルンです」が贈られました。 スマートフォンで気軽に写真を撮れる時代ですが、旅先でフィルムカメラならではの写真を残すのも楽しそうですね。 続いて、伊藤くんからは某有名ブランドのヘアオイルがプレゼントされました。 袋を見た瞬間から田嶋さんの表情が緩み、開封してさらに喜んでいる様子が印象的でした。 日野森くんと伊藤くんは誕生日が同じ日ということで、お互いにプレゼントを用意していました。 日野森くんから伊藤くんへは、コーヒー豆を保存するストッカーケースが贈られました。 一方、伊藤くんから日野森くんへは、植木鉢のような形をしたユニークなコーヒーフィルターがプレゼントされました。 また、日野森くんにはB4の尾崎くんから、ガラス製のコーヒーグラスとワイングラスが贈られました。 毎日研究室でコーヒーを豆から淹れている日野森くんにとって嬉しいプレゼントです。 そして、今回の


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命の構造・免疫・力を読み解く 膜タンパク質を包む設計分子から、RNAで細胞を選別するCRISPR、肝再生、脳のグリアネットワークまで
今週も、Nature誌とScience誌の最新号から、気になった研究を持ち寄って金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、膜タンパク質を水中で安定化する設計タンパク質、ウイルスのような巨大タンパク質ケージ、RNAを検知して細胞を排除するCRISPR、植物免疫を制御する選択的スプライシング、力を感じて再生する肝臓、フェロトーシスを防ぐ代謝物、脳をつなぐアストロサイト、そして15億年の進化を学習した生成AIまで、幅広い話題がそろいました。 一見すると異なるテーマですが、いずれも生命が「構造」「情報」「力」「代謝」をどのように利用しているのかを明らかにする研究です。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:膜タンパク質を人工タンパク質で包む Membrane protein solubilization and structure determination using de novo–designed proteins(Science) 膜タンパク質は、疎水性の表面を持つため、膜から取り出すと凝集しやすく、通常は界面活性剤や脂質粒子を使って扱いま


2026年度生化学川柳第十週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week10
先週はDNAについて学ぶ2回目の講義として、DNAを基盤とするさまざまな生命科学技術について学びました。 DNAの塩基配列に含まれる遺伝情報を読み解くことで、私たちの体がどのような遺伝子の働きによって制御されているのかを知ることができます。また、特定の遺伝子に生じた変異や欠損を調べることで、遺伝性疾患やがんをはじめとするさまざまな病気との関連を明らかにすることもできます。 DNAの塩基配列を知るためには、シーケンシングと呼ばれる塩基配列決定技術が必要です。また、特定の遺伝子を別の生物に導入したり、大量に増幅したりするためには、DNAを切断し、つなぎ合わせる技術が必要になります。 そこで活躍するのが制限酵素です。 制限酵素は、細菌などの原核生物が、侵入してきたウイルスなどの外来DNAを排除するために利用している酵素です。特定の塩基配列を認識してDNAを切断しますが、このままでは自身のDNAも切断されてしまいます。そのため、細菌は自分自身のDNAの認識配列をメチル化することで、制限酵素による切断から守っています。 遺伝子組換え技術では、この制限酵素を


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命の構造・移動・修復を読み解く色覚オプシンから、電場を感じる細胞、神経細胞のDNA損傷、HIVの核膜孔操作まで
今週も、Cell、Nature、Science誌の最新号から、気になった研究を持ち寄って金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、色覚を生み出すタンパク質の構造、電場を感じて移動する細胞、神経細胞のDNA損傷と修復、細菌同士のタンパク質共有、感染や食事に応答するT細胞など、幅広い話題がそろいました。 一見すると異なるテーマですが、いずれも生命が光、電気、力、損傷、栄養といった情報を受け取り、構造や機能を変化させる仕組みを明らかにしています。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:三色の光を見分ける錐体オプシン Illuminating the molecular basis of human daylight vision(Science) Structural insights into spectral tuning and retinal exchange in cone visual pigments(Science) Cryo–electron microscopy structures of human cone visual


2026年度生化学川柳第九週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week9
先週は中間試験明けの1回目の講義で、ヌクレオチドと核酸を学びました。核酸は文字通り真核生物の核に含まれる酸性物質で、リン酸を豊富に含むことに由来しています。一方で、遺伝情報を担うのはATGCの4つの塩基であり、こちらは窒素原子を含むことで弱い塩基性を示します。DNAとRNAは同じ核酸の仲間ですが、糖がデオキシリボースかリボースかという違いがあり、その差によって、一方は安定な遺伝情報の保管に、もう一方は遺伝情報の読み取りやタンパク質合成に使われています。ヌクレオチドは、こうした核酸の最小単位であり、塩基、糖、リン酸から構成されています。ATPは細胞内のエネルギーとしてよく知られていますが、3つのリン酸をもち、その加水分解がさまざまな代謝反応やモータータンパク質、シグナル伝達を支えています。 講義ではさらに、ヌクレオチドが遺伝情報の材料であるだけでなく、ATPのようなエネルギー分子、NAD⁺のような補因子、cAMPのようなシグナル分子としても働くことを学びました。核酸塩基にはプリン塩基とピリミジン塩基があり、DNAやRNAの中では特定の組み合わせで水


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命の情報・エネルギー・力を読み解く 抗CRISPRのmRNA分解から、細胞内DNA組み立て、ヤツメウナギの脳、スミレの種子発射まで
今週も、Nature誌とScience誌の最新号から、気になった研究を持ち寄って金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、細菌とファージの分子攻防、大きなDNAを正確に挿入するゲノム編集技術、これまで見落とされてきた小さなタンパク質、核へのエネルギー供給、母体栄養と新生児免疫、脳の進化、そして植物の巧妙な種子散布まで、幅広い話題がそろいました。 一見すると関係のないテーマのようにも見えますが、いずれも生命が「情報」「エネルギー」「構造」「力」をどのように扱っているのかを明らかにする研究です。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:Cas12を作らせない抗CRISPR 微生物学:mRNAを標的にする抗CRISPRタンパク質(Nature Japan) 細菌は、侵入してきたファージのDNAを切断するCRISPR–Casシステムを備えています。一方、ファージ側も抗CRISPRタンパク質を作り、細菌の防御を妨害します。 これまで知られていた抗CRISPRの多くは、完成したCasタンパク質に結合して、その働きを直接止めるものでした。今回の研究で調べら


2026年度生化学川柳第八週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week8
先週は中間試験を実施しました。 4月に講義が始まってから早くも2か月が経ち、この間に、生化学の基礎、水、アミノ酸とタンパク質、酵素、糖と糖鎖生物学について学んできました。毎回の講義では、関連するトピックについて英語の動画を視聴し、アンケート形式で問題にも取り組んでもらいました。また、講義までに予習動画を視聴し、講義中には前回の章末問題の解説に加えて、その回の復習問題や章末問題にペアワーク形式で取り組んでもらってきました。 中間試験では、こうした毎回の課題や復習問題で扱った内容を中心にしつつ、少し発展的な内容も含めて出題しました。全体として、日頃の学習を積み重ねてきたかどうかが結果に表れやすい内容だったのではないかと思います。中でも英語動画に関連した問題は、やや難しく感じた学生も多かったようで、聞き取りに苦労していた様子もうかがえました。 今回の経験を通して、これまでの学び方をあらためて振り返り、期末試験に向けて、毎週の予習、講義中の理解、そして復習の積み重ねを大切にしてもらえたらと思います。一度にまとめて覚えようとするよりも、毎回少しずつ理解を重
