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2025年度生化学川柳第七週目優秀川柳賞/2025Biochemistry Haiku prize week7

  • 執筆者の写真: nishinotatsuya
    nishinotatsuya
  • 9 時間前
  • 読了時間: 2分

先週は糖について学びました。


糖は私たちの生命活動を支える最も基本的なエネルギー源のひとつです。しかしその役割はエネルギー供給にとどまりません。糖は構造材としても重要であり、例えばセルロースは植物細胞壁の主要構成成分であり、グリコサミノグリカンはヒトの結合組織に弾力性を与えています。


また、糖は情報分子としても機能します。細胞表面に存在する複雑な糖鎖構造は、細胞同士の認識やウイルス・細菌の感染メカニズム、免疫応答などにも深く関与しています。これらの糖鎖を認識するのがレクチンと呼ばれる糖結合タンパク質です。糖のわずかな立体配置の違いが生体機能に大きな影響を与えることから、糖質生物学は「第三の生命鎖」とも称されています。


さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。


– 甘い夢 糖と想いが 結びつく

– C6つ 配置の違いで 別構造

– 還元性 ヘミアセタールと アルデヒド

– レクチンが 捕まえ転がし 引き入れる

– 腸内を 整えてくれて アリガ糖


見た目は似ていてもわずかな構造の違いで機能が大きく異なる——それが糖の面白さであり、奥深さでもあります。


下図は、インフルエンザウイルスが感染時に使う糖結合タンパク質「ノイラミニダーゼ」の構造です。


ウイルスはこのノイラミニダーゼを使って、宿主細胞表面のシアル酸に結合し、細胞内に侵入して増殖します。インフルエンザ治療薬「タミフル」はこの酵素に結合して機能を阻害することで、ウイルスの増殖を抑制します。

しかし、ウイルス側も黙ってはいません。シアル酸結合部位のアミノ酸(ヒスチジン→チロシン)を変異させることでタミフルに対する耐性を獲得します。このように、分子レベルでの“攻防戦”は常に進化しており、治療薬の開発にはタンパク質構造の理解が欠かせません。


ノイラミニダーゼとタミフルの詳細については、PDB-101の解説ページもぜひご覧ください。









さて、来週はいよいよ中間試験です。これまでに学んできた「アミノ酸」「タンパク質構造」「機能」「酵素」「糖・糖鎖」などの内容を、しっかり復習して臨んでください。体調にも気をつけて、健闘を祈ります!

 
 
 

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