2025年度生化学川柳第六週目優秀川柳賞/2025Biochemistry Haiku prize week6
- nishinotatsuya
- 5月28日
- 読了時間: 2分
先週は酵素について学びました。
酵素は私たちの体内で起こるあらゆる化学反応を加速させる、生命に欠かせない触媒です。酵素は特定の基質と高い特異性をもって結合し、その結合の合成や分解を促進します。無機触媒とは異なり、生体酵素は37℃前後の穏やかな条件下で反応を進め、しかも副反応が少なく高い選択性を持ちます。
このような触媒作用の鍵は、酵素が「遷移状態」を安定化することにあります。反応の途中で生じる不安定な中間体をうまく取り込むことで、酵素は反応速度を劇的に高めるのです。その効果は時に、10の17乗倍という驚異的なレベルに達します。
酵素の反応速度は基質濃度に依存し、ミカエリス・メンテン式により定量的に記述できます。そこに登場するKmやkcatといったパラメーターは、酵素の特異性や効率を示す重要な指標です。また、薬物や代謝調節に関わる「阻害」も、酵素活性の理解に欠かせない概念です。
さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。
– アセチル化 始まり告げる 遺伝子に
– 酵素さん 特異な相手と マッチング
– ケーキャット(kcat)エサ([E])を追いかけ(×) 最大速度(Vmax)
– 触媒の 強さが分かる パラメーター
– 阻害剤 生かすも殺すも 君次第
さて、以下の画像は約10年ほど前に発見されたプラスチック分解酵素PETaseの構造です。

PETはペットボトルなどに使われるポリエチレンテレフタレートというプラスチックで、安定で分解されにくい性質があるため、環境汚染の一因ともなっています。このPETを分解する微生物から見つかった酵素PETaseは、PETをMHETに分解し、さらにMHETaseという酵素がそれをエチレングリコール(EG)とテレフタル酸(TPA)にまで分解します。
私たちの研究室でも、こうしたプラスチック分解酵素の研究に取り組んでいます。特に好熱菌由来の酵素は高温下でも安定して活性を保つため、分解効率や耐久性の面で大きな可能性を秘めています。環境問題に直結するこのテーマは、酵素の機能と応用の広がりを実感させてくれます。
来週は「糖質と糖鎖生物学」について学びます。グルコースやフルクトースなどの単糖類から、細胞表面に存在する複雑な糖鎖まで、構造の多様性とその生体機能への関わりを見ていきましょう。糖の世界にも、分子認識や情報伝達といったダイナミックな生化学の現場が広がっています。
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