

2026年度生化学川柳第九週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week9
先週は中間試験明けの1回目の講義で、ヌクレオチドと核酸を学びました。核酸は文字通り真核生物の核に含まれる酸性物質で、リン酸を豊富に含むことに由来しています。一方で、遺伝情報を担うのはATGCの4つの塩基であり、こちらは窒素原子を含むことで弱い塩基性を示します。DNAとRNAは同じ核酸の仲間ですが、糖がデオキシリボースかリボースかという違いがあり、その差によって、一方は安定な遺伝情報の保管に、もう一方は遺伝情報の読み取りやタンパク質合成に使われています。ヌクレオチドは、こうした核酸の最小単位であり、塩基、糖、リン酸から構成されています。ATPは細胞内のエネルギーとしてよく知られていますが、3つのリン酸をもち、その加水分解がさまざまな代謝反応やモータータンパク質、シグナル伝達を支えています。 講義ではさらに、ヌクレオチドが遺伝情報の材料であるだけでなく、ATPのようなエネルギー分子、NAD⁺のような補因子、cAMPのようなシグナル分子としても働くことを学びました。核酸塩基にはプリン塩基とピリミジン塩基があり、DNAやRNAの中では特定の組み合わせで水


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命の情報・エネルギー・力を読み解く 抗CRISPRのmRNA分解から、細胞内DNA組み立て、ヤツメウナギの脳、スミレの種子発射まで
今週も、Nature誌とScience誌の最新号から、気になった研究を持ち寄って金曜CNSカフェを開催しました。 今回は、細菌とファージの分子攻防、大きなDNAを正確に挿入するゲノム編集技術、これまで見落とされてきた小さなタンパク質、核へのエネルギー供給、母体栄養と新生児免疫、脳の進化、そして植物の巧妙な種子散布まで、幅広い話題がそろいました。 一見すると関係のないテーマのようにも見えますが、いずれも生命が「情報」「エネルギー」「構造」「力」をどのように扱っているのかを明らかにする研究です。 それでは、今週のおすすめ8品です。 1品目:Cas12を作らせない抗CRISPR 微生物学:mRNAを標的にする抗CRISPRタンパク質(Nature Japan) 細菌は、侵入してきたファージのDNAを切断するCRISPR–Casシステムを備えています。一方、ファージ側も抗CRISPRタンパク質を作り、細菌の防御を妨害します。 これまで知られていた抗CRISPRの多くは、完成したCasタンパク質に結合して、その働きを直接止めるものでした。今回の研究で調べら


2026年度生化学川柳第八週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week8
先週は中間試験を実施しました。 4月に講義が始まってから早くも2か月が経ち、この間に、生化学の基礎、水、アミノ酸とタンパク質、酵素、糖と糖鎖生物学について学んできました。毎回の講義では、関連するトピックについて英語の動画を視聴し、アンケート形式で問題にも取り組んでもらいました。また、講義までに予習動画を視聴し、講義中には前回の章末問題の解説に加えて、その回の復習問題や章末問題にペアワーク形式で取り組んでもらってきました。 中間試験では、こうした毎回の課題や復習問題で扱った内容を中心にしつつ、少し発展的な内容も含めて出題しました。全体として、日頃の学習を積み重ねてきたかどうかが結果に表れやすい内容だったのではないかと思います。中でも英語動画に関連した問題は、やや難しく感じた学生も多かったようで、聞き取りに苦労していた様子もうかがえました。 今回の経験を通して、これまでの学び方をあらためて振り返り、期末試験に向けて、毎週の予習、講義中の理解、そして復習の積み重ねを大切にしてもらえたらと思います。一度にまとめて覚えようとするよりも、毎回少しずつ理解を重


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命のしくみを“見える形”にする 抗真菌薬の効き方から、卵母細胞のタンパク質貯蔵庫、ハエトリグサの高速運動、抗体の信頼性まで
金曜日の午後、研究室のお茶机で「金曜CNSカフェ」を開きました。 今回は、生化学1の追試験対応があったため、いつもより少し遅めの開店となりました。今週は、抗真菌薬、卵母細胞の巨大構造、mRNAワクチン、T細胞代謝、細菌の抗ファージ免疫、ハエトリグサの高速運動、胎盤の代謝時計、子どもの脳発達、そして研究の信頼性まで、幅広い話題が並びました。 1品目:抗真菌薬は酵素をどう止めるのか カスポファンギンと細胞壁合成酵素の構造 Natureでは、抗真菌薬カスポファンギンが、真菌の細胞壁合成に必須のβ-1,3-グルカン合成酵素をどのように阻害するのかを、構造から明らかにした研究が掲載されました。 ヒトの細胞には細胞壁がありませんが、真菌には細胞壁があります。そのため、細胞壁合成を止める薬は、真菌に対して選択的に働く可能性があります。 今回の研究は、薬がどこに結合し、どのように酵素の働きを止めるのか、さらに薬剤耐性がどのように起こるのかを考える上で重要です。構造生物学が、薬の作用機構や耐性の理解に直接つながる好例だと感じました。 2品目:卵母細胞の中の巨大なタ


2026年度生化学川柳第七週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week7
先週は、糖と糖鎖生物学について学びました。 今回は、台風が通過していく中で、久しぶりのオンデマンド講義となりました。大雨の中、ゼミ室で講義内容を録画・録音しましたが、久しぶりだったためか、1回目の録画では自分のマイクを入れ忘れてしまい、あとで確認すると音声がまったく入っていませんでした。気を取り直して録り直し、オンラインサイトにアップロードできたのは講義開始予定の5分前という、かなりぎりぎりのタイミングでした。画面の向こうで待っているであろう皆さんの姿を思い浮かべながら、私自身もお昼ご飯で糖分補給をしておりました。体の中では酵素がしっかり働いて、午前中に消費したエネルギーを補ってくれたことと思います。 さて、糖はエネルギー源として重要であるだけでなく、細胞表面やタンパク質・脂質に結合した糖鎖として、細胞どうしの認識や情報伝達、免疫などにも深く関わっています。身近な分子でありながら、生命現象のさまざまな場面で大切な役割を果たしていることを見ていきました。卓上の砂糖は非常に安定で、そのままではエネルギーになりませんが、燃やせば炎が上がりますし、食べれ


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 老化、痛み、睡眠、そして生命科学の未来
今週も金曜日の午後、研究室のお茶机で「金曜CNSカフェ」を開きました。 今週は、老化、慢性痛、睡眠、マングローブ林の回復、ゲノム編集、植物免疫、そしてAIやロボットによって変わる研究の未来まで、幅広い話題が並びました。 1品目:老化を遺伝子発現から読む 体の年齢は、カレンダーだけで決まらない Natureの表紙を飾ったのは、哺乳類の老化と死亡率に関わる遺伝子発現パターンの研究です。 年齢というと、生まれてから何年たったかという「暦年齢」を思い浮かべます。しかし、実際の体の状態は人によって異なります。この研究では、げっ歯類、サル類、ヒトの大規模なRNAデータを解析し、老化や死亡率に関わる共通の転写パターンを探っています。 将来的には、遺伝子発現の状態から「体の老化度」や健康状態をより詳しく評価し、抗老化介入や健康寿命の研究に役立てられる可能性があります。 2品目:慢性痛だけを標的にする神経回路 痛みを消すのではなく、つらい慢性痛を抑える 痛みは、本来は体を守るために必要な感覚です。しかし、けがが治った後も痛みが続く慢性痛は、生活の質を大きく下げます


2026年度生化学川柳第六週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week6
先週は酵素について学びました。 私たちの体の中では、数えきれないほど多くの化学反応が絶えず進んでいます。その反応を、必要なときに、必要な場所で、無理のない条件のもとで進めているのが酵素です。ほとんどの酵素はタンパク質からできており、自分自身は消費されることなく、反応の速度を大きく高める触媒として働きます。なお、一部には触媒活性をもつRNAも知られています。 酵素は反応そのものの平衡を変えるのではなく、反応が進むために越えなければならない活性化エネルギーを下げることで、反応を起こりやすくしています。また、酵素が特定の基質を選んで結合すること、補因子や補酵素の助けを借りて働くものがあること、基質が結合することで酵素の形が変わる誘導適合、そして反応速度をどのように調べるかという酵素速度論の考え方にも触れています。 さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。 – 高い山 酵素で楽に 登りきる – アツイとね 酵素もわたしも 失活よ – ホロ酵素 人の手を借り する労働 – 基質(キミ)だけを 選んでしまう 特異性 – 変身だ 誘導適合 君のため...


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 新型コロナ感染の後遺症から植物免疫、ゲノム編集まで
金曜日の午後、研究室のお茶机で「金曜CNSカフェ」を開きました。 今週は、新型コロナ感染の後遺症に関わる自己抗体の話題から、植物のストレス応答、マイクロバイオーム、ゲノム編集、転写制御、RNA輸送まで、幅広い研究が並びました。 1品目:新型コロナ感染の後遺症と自己抗体 感染後に続く痛みや疲労感に、免疫の異常が関わる可能性 新型コロナウイルス感染症から回復した後も、強い疲労感、痛み、集中力の低下、体調不良などに長く悩まされる方がいます。症状は人によって大きく異なり、原因も一つではないと考えられています。そのため、患者さんにとっても、医療者にとっても、理解と対応が難しい問題です。 Cell誌の研究では、新型コロナ感染後の後遺症を持つ患者さんの血液中に含まれるIgG抗体をマウスに移すと、痛みに関連する行動や神経線維の障害が見られることが示されました。これは、少なくとも一部の患者さんでは、自己抗体が神経症状に関わっている可能性を示すものです。 もちろん、新型コロナ感染後の後遺症のすべてをこの仕組みだけで説明できるわけではありません。それでも、「気のせい」


2026年度生化学川柳第五週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week5
先週はタンパク質の機能について学びました。 私たちの身体の中では、実にさまざまな種類のタンパク質が日々働いています。体の形を支えるもの、物質を運ぶもの、異物を認識するもの、筋肉の動きに関わるものなど、その役割はとても多彩です。講義では、球状タンパク質の機能として、分子の貯蔵、運搬、防御、筋収縮、生体反応などがあることを学びました。 その中でも今回は、酸素を運ぶヘモグロビンを中心に、タンパク質がどのようにリガンドと結合し、その結合がどのように調節されるのかを見ていきました。ヘモグロビンは、酸素が1つ結合すると次の酸素が結合しやすくなる協同性を示し、肺では酸素を受け取り、組織では放しやすくなるよう巧みに働いています。さらに、pHや2,3-BPGによって酸素親和性が変化することで、体の中で必要な場所へ酸素を届けやすくしていることも学びました。 さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。 –ヘモグロビン ゆるんだ隙に 酸素イン –一つ乗り 次も続けと 協同性 –高山は BPGで 息つなぐ –離さない ヘモグロビンの 重い愛 -リガンドが ガチ恋してる 受容体


金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー GLP-1から植物の温度感知、DNA修復まで
金曜日の午後、研究室のお茶机で「金曜CNSカフェ」を開きました。 この会では、Nature や Science などの一流科学誌に掲載された最新研究を、お茶やコーヒー、お菓子とともに気軽に眺めています。論文を一報ずつ深く読み込むというよりも、「今、世界ではどのような研究が進んでいるのか」を知り、研究室での議論や新しい発想につなげることを目的としています。 今週は、一般にも関心の高いGLP-1肥満治療薬の話題から、植物の温度感知、DNA修復、細菌とウイルスの攻防まで、幅広い研究が並びました。 1品目:GLP-1ダイエットの科学的根拠 肥満治療薬の効き方は遺伝子で変わる? GLP-1受容体作動薬は、肥満や糖尿病の治療薬として大きな注目を集めています。一方で、同じ薬を使っても、体重が大きく減る人もいれば、効果が小さい人もいます。また、吐き気や嘔吐などの副作用にも個人差があります。 今回のNature論文では、GLP-1薬を使用した約2.8万人のデータを解析し、GLP1RやGIPRといった薬の標的に関わる遺伝子の違いが、体重減少の程度や副作用に関係するこ
