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2026年度生化学川柳第十週目優秀川柳賞/2026Biochemistry Haiku prize week10

  • 7月1日
  • 読了時間: 4分

先週はDNAについて学ぶ2回目の講義として、DNAを基盤とするさまざまな生命科学技術について学びました。


DNAの塩基配列に含まれる遺伝情報を読み解くことで、私たちの体がどのような遺伝子の働きによって制御されているのかを知ることができます。また、特定の遺伝子に生じた変異や欠損を調べることで、遺伝性疾患やがんをはじめとするさまざまな病気との関連を明らかにすることもできます。

DNAの塩基配列を知るためには、シーケンシングと呼ばれる塩基配列決定技術が必要です。また、特定の遺伝子を別の生物に導入したり、大量に増幅したりするためには、DNAを切断し、つなぎ合わせる技術が必要になります。


そこで活躍するのが制限酵素です。

制限酵素は、細菌などの原核生物が、侵入してきたウイルスなどの外来DNAを排除するために利用している酵素です。特定の塩基配列を認識してDNAを切断しますが、このままでは自身のDNAも切断されてしまいます。そのため、細菌は自分自身のDNAの認識配列をメチル化することで、制限酵素による切断から守っています。

遺伝子組換え技術では、この制限酵素を利用してDNAを目的の位置で切断し、DNAリガーゼによって別のDNA断片とつなぎ合わせます。こうして目的の遺伝子をプラスミドなどのベクターに組み込み、大腸菌などの細胞に導入することで、DNAを増幅したり、組換えタンパク質を大量に作らせたりすることができます。

現在では、PCRによって目的のDNA領域だけを増幅することもできます。PCRは単にDNAを増やすだけでなく、クローニング、部位特異的変異導入、DNAフィンガープリント、遺伝子発現量の解析など、さまざまな目的に利用されています。

また、組換えDNA技術を利用することで、目的のタンパク質にGFPなどの蛍光タンパク質を融合し、細胞の中で「どこにいるのか」を観察することもできます。さらに、アフィニティータグを利用すれば目的のタンパク質を精製でき、免疫沈降法や酵母ツーハイブリッド法などを使えば、「どのタンパク質と相互作用するのか」を調べることもできます。DNAの情報を利用することで、タンパク質の構造や機能だけでなく、細胞内での局在や分子同士の相互作用まで調べることができるわけです。

CRISPR-Cas9も、もともとは細菌などの原核生物が持つ外来DNAに対する防御システムです。ガイドRNAによって標的となるDNA配列を認識し、Cas9がDNAを切断します。この仕組みを応用したゲノム編集技術では、特定の遺伝子を欠損させたり、目的の変異を導入したりすることができます。

このように、原核生物が長い進化の過程で獲得してきた「DNAを切る」「外来DNAを見分ける」といった仕組みを利用することで、私たちは遺伝情報を読み、増やし、組み換え、さらには書き換えることまでできるようになりました。

生命科学の技術の多くは、私たちがゼロから作り出したものではありません。生物がもともと持っている巧妙な仕組みを発見し、その原理を理解して、研究に利用しているのです。


さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。

CRISPRで 消せぬ未練が 発現中

仲違い アニーリングで 元通り

アミノ酸 コードする方 センスあり

カタカナが 制限酵素 思考プツッ

HaeⅢ 切るのに夢中で あらスメア


制限酵素には、それぞれ異なる認識配列があり、認識する配列の長さにも違いがあります。

大腸菌に感染するλファージのゲノムは約48.5 kbpの二本鎖DNAです。このDNAを異なる制限酵素で処理すると、図に示すように、生じるDNA断片の数や大きさが大きく異なります。


6塩基配列を認識するEcoRIやBamHIなどでは、λファージDNA中に認識配列が現れる頻度が比較的低いため、切断される箇所は少なく、比較的大きなDNA断片が数本生じます。


一方、4塩基配列を認識するHaeIIIやRsaIでは、認識配列がより頻繁に現れるため、多数の場所でDNAが切断され、小さなDNA断片がたくさん生じます。その結果、電気泳動では多数のバンドが現れ、条件によっては一本一本を区別しにくい「スメア」のようにも見えてきます。

川柳にもある通り、HaeIIIでは多くのバンドが生じて、忙しく働いていた結果が確認できます。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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