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金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー 生命の構造・移動・修復を読み解く色覚オプシンから、電場を感じる細胞、神経細胞のDNA損傷、HIVの核膜孔操作まで

  • 7 日前
  • 読了時間: 5分


今週も、Cell、Nature、Science誌の最新号から、気になった研究を持ち寄って金曜CNSカフェを開催しました。

今回は、色覚を生み出すタンパク質の構造、電場を感じて移動する細胞、神経細胞のDNA損傷と修復、細菌同士のタンパク質共有、感染や食事に応答するT細胞など、幅広い話題がそろいました。

一見すると異なるテーマですが、いずれも生命が光、電気、力、損傷、栄養といった情報を受け取り、構造や機能を変化させる仕組みを明らかにしています。

それでは、今週のおすすめ8品です。

1品目:三色の光を見分ける錐体オプシン

ヒトの昼間の色覚は、赤、緑、青に応答する3種類の錐体オプシンによって支えられています。今週のScience誌では、その構造と機能を調べた3報が同時に掲載されました。

赤と緑のオプシンでは、レチナール周辺のわずかなアミノ酸置換が静電環境を変え、吸収波長を調節していました。また、錐体オプシンに特有の膜側の開口部が、明所視に必要な速いレチナール交換を可能にすると考えられます。わずかな側鎖や水分子の配置が、私たちの色覚を生み出しています。

2品目:タンパク質の揺らぎを大規模に測る

タンパク質は一つの構造に固定されず、部分的に開いた高エネルギー状態との間を揺らいでいます。今回の研究では、多検体型の水素–重水素交換質量分析を用いて、5,778種類の小型タンパク質ドメインを解析しました。

同じ立体構造や全体安定性を持つタンパク質でも、局所的な揺らぎ方は大きく異なりました。得られた情報から、不安定な二次構造を安定化する変異も設計されており、静的な構造予測から「動きの予測と設計」への広がりを示しています。

3品目:電場を感じて進む細胞

傷口の周辺には電場が生じ、免疫細胞や上皮細胞はその方向に沿って移動します。今回、その電場を感知する一回膜貫通タンパク質TMEM154が同定され、「Galvanin」と名付けられました。

電場をかけるとGalvaninは細胞膜上の陽極側へ偏り、その直後に突起形成や収縮の位置が変化します。Galvaninを別の細胞に発現させるだけで電場応答を与えられることから、電気的な方向情報を細胞運動へ伝えるセンサーと考えられます。

4品目:狭い脳内を移動するとニューロンのDNAが傷つく

発生中の神経細胞は、混み合った脳組織の隙間を通って目的地へ移動します。今回、この移動による核の変形が、大量のDNA二本鎖切断を引き起こすことが示されました。

損傷は核膜破裂ではなく、機械的ストレスによってDNAトポイソメラーゼIIβの反応が途中で止まることで生じます。通常は非相同末端結合で修復されますが、修復できない場合には、成体期の運動機能にも影響が残りました。

5品目:DNA修復が神経細胞を死なせる

神経細胞は、抗がん剤シスプラチンによるDNA損傷をヌクレオチド除去修復で処理します。しかし、分裂を終えた神経細胞ではdNTPが少ないため、修復合成によって材料が枯渇し、修復が未完了のまま二本鎖切断と細胞死を引き起こします。

デオキシヌクレオシドの補充や、dNTPを分解するSAMHD1の欠損によって神経障害が軽減されました。DNA修復の成否は、修復酵素だけでなく、材料を供給する代謝にも左右されることが分かります。

6品目:抗菌薬にさらされた細菌はタンパク質を分け合う

抗菌薬にさらされた細菌集団は、タンパク質を含む膜小胞を放出するドナー細胞と、それを取り込むpersister細胞へ分かれました。

ドナーではPsp膜ストレス応答が活性化し、受容側ではタンパク質合成とPsp応答が抑えられていました。休眠状態のpersisterは、活動中の隣接細胞からタンパク質を受け取ることで、抗菌薬存在下での生存率を高めていました。

7品目:HIVは核膜孔を感染可能な状態へ変える

HIV-1は細胞間感染の際、感染細胞上のEnvと標的T細胞のCD4との接触を利用して、CD4–LCK–CDK1シグナルを活性化します。

CDK1によって核膜孔タンパク質がリン酸化されると、核膜孔がHIVカプシドを通しやすい状態になります。遊離ウイルスでは起こりにくいこの反応が、休止期T細胞への効率的な感染を可能にしていました。

8品目:食後の脂質代謝がT細胞を長く強くする

食後に採取したT細胞では、ミトコンドリア機能やサイトカイン産生が高く、その差は活性化・増殖後にも残りました。

この効果を引き起こすのは、食後に増えるトリグリセリドに富むカイロミクロンです。カイロミクロンはmTORC1依存的な翻訳能を高め、記憶細胞分化やCAR-T細胞の治療効果も向上させました。採血時の食事状態が、免疫解析や細胞治療の結果に影響する可能性があります。

今週のまとめ

今週の8品では、生命が光、電気、力、損傷、感染、栄養といった多様な情報を読み取り、構造や機能を変化させる仕組みを眺めました。

錐体オプシンのわずかな構造差は色覚を生み出し、タンパク質の揺らぎは機能や設計可能性を広げます。Galvaninは電場を移動方向へ変換し、神経細胞は移動やDNA修復に伴う損傷と向き合っています。

細菌はタンパク質を共有して抗菌薬を生き延び、HIVは核膜孔を感染に適した状態へ変えます。食後の脂質は、T細胞の機能を長期間にわたって高めます。

今週も、構造生物学から細胞移動、DNA修復、感染、免疫まで、生命科学の広がりを楽しむ時間となりました。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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