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2025年度生化学川柳第四週目優秀川柳賞/2025Biochemistry Haiku prize week4

  • 執筆者の写真: nishinotatsuya
    nishinotatsuya
  • 3 日前
  • 読了時間: 2分

先週はタンパク質の構造について学びました。


アミノ酸残基が約50個以上つながったポリペプチドを一般に「タンパク質」と呼びますが、ほとんどのタンパク質は特定の三次元構造をとることで初めて機能を発揮します。タンパク質の構造は4段階に分けて理解されており、アミノ酸の並び順である「一次構造」、水素結合などで形成される「二次構造」(例:αヘリックスやβシート)、それらがさらに空間的に折りたたまれた「三次構造」、複数のポリペプチド鎖が集まってできる「四次構造」があります。


構造を安定化させるには疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、静電的相互作用、さらにはジスルフィド結合などが重要な役割を果たします。特に、ジスルフィド結合は共有結合であり、タンパク質の高次構造の維持に大きな影響を与えます。


さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。

パーマ剤 S-S(エスエス)切断 枝毛誕

美容院 髪型変えるは ジスルフィド

らせん巻く ミクロ世界の 構造美

逆平行 まっすぐ繋ぐ 水素橋

隣の子 可愛いだけじゃ ダメみたい


分子構造の微細な違いが性質や機能に直結するのがタンパク質の面白さでもあります。


下の図は、ヒト毛髪に豊富に含まれるケラチンの構造モデルです。ケラチンにはクラス1とクラス2の2種類があり、互いにαヘリックスを巻きつけて「コイルドコイル構造」を形成しています。図中の黄色の球はシステイン残基の硫黄原子を表していて、これらがジスルフィド結合を通じて髪の強度や形状を支えています。


パーマをかける際には、このジスルフィド結合を一度還元剤で切断し、髪を希望の形に整えた後、酸化剤で再結合させることで新たな形を固定します。このように、美容の現場でもタンパク質化学が活用されています。


構造に注目すると、システインはαヘリックスのループや末端など、柔軟性の高い部分に集まる傾向があり、結合の再編成を通じて構造の可塑性に寄与しています。私自身はパーマ経験がありませんが、ジスルフィド結合を自在に操作する技術には科学者としての興味をそそられます。


来週はいよいよ、タンパク質の機能に迫ります。構造がいかにして生体内での働きへと結びついていくのか、一緒に見ていきましょう。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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