2025年度生化学川柳第五週目優秀川柳賞/2025Biochemistry Haiku prize week5
- nishinotatsuya
- 5月21日
- 読了時間: 2分
先週はタンパク質の機能について学びました。
私たちの体内では、実に多くのタンパク質が複雑かつ精密に働いています。酸素を運搬するヘモグロビンや、細胞内に酸素を貯蔵するミオグロビン、外敵を認識して排除する抗体、そして私たちの体を動かすアクチンやミオシン。こうしたタンパク質は、リガンドと呼ばれる分子と可逆的に結合しながら、その構造を柔軟に変化させて生理機能を発揮しています。
たとえばヘモグロビンは、4つのサブユニットをもつタンパク質で、それぞれに酸素を結合するヘムを備えています。酸素が1つ結合すると構造が変化し、他のサブユニットにも酸素が結合しやすくなるという「協同性」の性質を持ちます。この性質により、肺では酸素を効率よく取り込み、組織では放出しやすくなっています。
また、赤血球中に存在する2,3-BPGという分子がヘモグロビンと結合すると、酸素の親和性が下がり、組織での酸素放出が促進されます。高地に適応する仕組みも、こうした分子レベルの制御によって可能になるのです。
抗体もまた、高い特異性で抗原と結合するタンパク質です。抗原との結合によって抗体自体の構造も変化し、まさに「誘導適合(induced fit)」という現象を体現しています。そして筋収縮では、アクチンとミオシンという二つのタンパク質がATPの加水分解に伴って立体構造を変化させ、互いにスライドし合うことで、筋肉の動きが生じます。
さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。
–赤き血に 酸素を乗せて 息をする
–BPG 高山地での 命綱
–子の命 アルファとガンマで 繋いでく
–筋肉は 引き寄せあって 動かそう
–分子たち 似たもの集まる 適応化
以下の画像は、酸素と結合したヘモグロビンの構造です。中心のヘムと呼ばれる補欠分子族が鉄イオンを介して酸素を保持しています。この構造があるからこそ、酸素は効率よく運ばれ、必要な場所で放出されるのです。興味のある方は、PDB-101の解説動画もぜひご覧ください。

来週はいよいよ、酵素の話に入ります。リガンドとの結合にとどまらず、それを「変化させる」タンパク質、すなわち酵素のはたらきと仕組みに迫っていきます。どのようにして生体反応を加速させているのか、一緒にその謎を解き明かしましょう。
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