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バイオインフォマティクス教育セミナー2024

2024年12月9日から12日にかけて、毎年恒例のバイオインフォマティクス教育セミナーを開催しました。


このセミナーは、学部生と大学院生を対象に、国内外の講師陣を招いて講義や演習を行うものです。今年は4名の外国人講師と10名の国内講師にご参加いただき、バイオインフォマティクスに関連するさまざまなテーマについて深く学ぶ機会となりました。

初日の注目講義: Prakash Arumugam博士の講演

セミナー初日は、私のウィーン/オックスフォード時代の元同僚で、現在シンガポールにて研究室を主催しているPrakash Arumugam博士(親しみを込めてPrakashと呼んでいます)の講演がありました。

例年は基礎的な内容が中心でしたが、今年はPrakash博士が取り組む「天然日焼け止め成分の大量合成」に関する最新の研究成果をご紹介いただきました。

現在、紫外線吸収剤であるオキシベンゾンや紫外線散乱剤である二酸化チタンは日焼け止め製品に広く使用されていますが、サンゴや海洋生物に有害であることが指摘されています。これに代わる安全な代替品として、シアノバクテリアが産生する「マイコスポリン」という糖とアミノ酸の融合化合物が注目されています。

しかし、この化合物は天然の生産量が少なく、化学合成も難しいため、合成生物学を用いた効率的な生産技術が求められています。Prakash博士は、出芽酵母の遺伝学を駆使し、マイコスポリンの生産量を従来の10倍以上に高めることに成功しました。今後は、この合成経路に関与するタンパク質の構造解析を、私たちの研究室との共同研究で進める予定です。







三日目の注目講義: 富井健太郎先生によるAlphaFoldの紹介

三日目の午前中には、産業技術総合研究所の富井健太郎先生による講義が行われました。富井先生は、私が大学院博士課程で所属していた生物分子工学研究所の隣の研究グループに所属しており、長年このセミナーにご協力いただいています。

今年の講義では、ノーベル化学賞を受賞した「AlphaFold」に焦点を当て、タンパク質立体構造予測法の原理や利用法、活用時の注意点について、非常にわかりやすく解説していただきました。

講義中には、3年生の学部学生たちが積極的に質問を投げかける姿が見られ、学生たちの関心の高さと学びへの意欲を感じられる時間となりました。
















午後の演習: Discovery Studioを使った実践セッション

その日の午後は、私が担当する演習セッションを実施しました。オンライン形式で行われ、Discovery Studioを用いたタンパク質と化合物のドッキングシミュレーションや、化合物の薬効効果の比較を行いました。

学生たちはシミュレーションを通じて、バイオインフォマティクスツールの実践的な活用方法を学び、非常に意欲的に取り組んでいました。


四日目の講義: Adina Howe先生による農業メタゲノム解析

四日目には、アイオワ州立大学のAdina Howe先生による「農業メタゲノム解析」に関する講義が行われました。

講義では、バイオインフォマティクスの基本概念や、微生物をメタゲノム解析によって同定する方法について解説がありました。特に、健康や病気に関連する微生物の分類・同定を行う際のパターン解析や主成分分析の活用例が示されました。さらに、豚舎での糞尿発酵に関与する微生物の解析や、耐性菌の伝播を防ぐための農地の緩衝地帯の役割について、具体的な研究成果が紹介されました。

講義の締めくくりには、Adina先生の研究室で撮影されたビデオが公開され、実験室の雰囲気や日々の研究活動について、和やかな視点から紹介されました。

Adina先生(後列真ん中)を囲んで。


懇親会での交流

二日目と四日目の夕方には懇親会が開催され、講演者や学生、関係者が一堂に会し、研究や日常生活について和やかに議論を交わしました。このような非公式な交流は、参加者同士の親睦を深める貴重な機会となりました。


まとめ

今年も多くの講師や学生たちに支えられ、充実したセミナーを開催することができました。このセミナーが、学生たちにとって新しい知見を得る場であるとともに、研究の新たな方向性を見いだすきっかけになれば幸いです。

ご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。

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