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金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニュー構造で未知を見つけ、RNAでDNAを読み、人工転写因子で細胞を作り変える

9月20日
読了時間: 7分

今週もCell・Nature・Scienceから、気になった生命科学研究をピックアップします。

今週は私が山梨大学で特別講義を担当しているため、いつもの金曜15時からの対面での「CNSカフェ」はお休みし、オンラインでの情報共有とします。今回は、Cell、Nature、Scienceの9報を8つのテーマにまとめました。

今週の論文を眺めていると、「生命はどのように情報を読み取り、それを機能へ変換しているのか」という共通したテーマが見えてきます。タンパク質の「形」から未知の機能を発見する研究、RNAがDNAを飛び飛びに認識するCRISPR以前の仕組み、栄養状態をcodon単位の翻訳へ変換する仕組み、そして自然界には存在しない転写因子を人工的に作り出す研究まで、生命情報の読み方と書き換え方を考えさせられる一週間です。

Nature

TM184C is a GPCR-like regulator of intercellular exchange and autophagy

タンパク質の機能を予測する際には、通常は既知タンパク質とのアミノ酸配列の類似性を手掛かりにします。しかし、進化の過程で配列が大きく変化すると、その関係は見えなくなります。

今回の研究では、2億を超えるAlphaFold2予測構造を「形」の類似性から探索し、配列からはGPCRと判定できなかったTM184やPRRTという“superdark” protein familyを発見しました。なかでもTM184Cは、β-arrestin recruitmentやGRK-dependent phosphorylationといったGPCRらしい性質を持ちながら、plasma membraneではなく細胞内vesicleに局在していました。

さらにTM184C-positive vesicleはmicrotubuleに沿って移動し、細胞から伸びたprojectionへ集まり、隣の細胞との間に長いbridgeを形成します。そのbridgeを通してvesicleやorganelleが細胞間を移動し、TM184Cはautophagyの調節にも関与していました。

「配列が似ていないから無関係」ではなく、「形から探せば、これまで見えなかった進化的・機能的関係が見つかる」という、AlphaFold時代らしい研究です。

2品目:ヒトのMg²⁺輸送体CNNM4は、予想以上に複雑な分子機械だった

Cell

細胞内のMg²⁺濃度を保つことは、ATP利用をはじめとするさまざまな生命反応に不可欠です。今回の研究では、ヒトMg²⁺ transporterであるCNNM4のfull-length cryo-EM構造が解析されました。

CNNM4は単純なdimerではなく、非対称なdimerを2組組み合わせた“dimer of dimers”を形成し、その間ではdomain swappingまで起きています。また、outward-facing stateとoccluded stateが捉えられ、Mg²⁺/Na⁺ antiporterとしてのconformational cycleが明らかになりました。

特に重要なのがE284で、この残基の向きが変化することでMg²⁺ coordinationが崩れ、Na⁺ bindingと連動してMg²⁺ releaseが促進されるモデルが示されました。さらに細胞内領域には追加のMg²⁺を結合する“acidic patch”があり、Mg²⁺ sensorとして働く可能性もあります。

イオンを運ぶだけの膜タンパク質ではなく、複数のdomainを統合した巨大なregulatory machineとしてCNNM4を見る必要がありそうです。

Nature

Trypanosomeのmitochondriaでは、DNAから転写されたRNAがそのままmRNAになるわけではありません。guide RNA(gRNA)の情報に従ってuridine(U)が挿入・削除され、初めて正しいproteinをコードするmRNAが作られます。

今回、U deletionを担うRECC1とU insertionを担うRECC2という約1 MDaのRNA-editing catalytic complexがcryo-EMで解析されました。その姿は、head、core、左右のwing、tailを持つ**“dragonfly”のような巨大ribonucleoprotein complex**です。

中央のRNase III coreでgRNA–mRNA duplexを認識してmRNAを切断し、tail側ではexonucleaseやTUTaseがUを削除または追加し、wing側ではRNA ligaseが編集後のRNAを再結合します。さらに、通常ならtranslationに使われるtRNAが、ここではcomplexの構造を支えるarchitectural RNAとして組み込まれているのも興味深い点です。

つまりeditosomeは、多数のenzymeを単に集めたものではなく、RNA substrateの周囲で各enzymeを動かす可動式のreaction chamberとして設計されていました。

Science ― 2報同時掲載

今週最も印象的だった研究の一つです。

CRISPR-Casでは、guide RNAと標的DNAが連続的な塩基対を作ることで標的を認識します。ところが今回発見されたVIPR(Viral Interference Programmable Repeat)systemでは、VIPR RNA(vrRNA)がGGY/NNというrepeatを持ち、NN部分だけがDNAと塩基対を作ります。つまり、DNAを1塩基ずつ飛ばしながら読むnoncontiguous recognition codeです。

もう1報では21種類のcryo-EM構造が解析され、Vipr proteinがvrRNAに沿ってhelical filamentを形成し、GGY部分をprotein内部へ隠しながらNNだけをDNAへ提示することが明らかになりました。その結果、gapped RNA–DNA hybridとnontarget DNA strandを組み合わせた非常に珍しいgeometric triplexが形成されます。

さらにVIPRは主にphageにコードされ、他のphageのgene expressionを抑えるために利用されていました。そこからprokaryotic genomeへ移り、RAMP duplicationやnuclease、CRISPR arrayの獲得を経てClass 1 CRISPR-Casへ進化した可能性が提案されています。

CRISPRによるadaptive immunityのルーツが、古代のvirus同士の“戦争”にあったかもしれないという非常に面白い進化モデルです。

Nature

Diverse bacterial pattern recognition receptors sense the core phage proteome

動物のinnate immunityでは、NOD-like receptor(NLR)などが病原体由来の分子パターンを認識します。では細菌は、自分を感染するphageをどのように見つけているのでしょうか。

今回、prokaryotic STAND NTPaseを系統的に解析したところ、少なくとも90種類のantiviral familyが見つかりました。その一つAvs7は、phageのmajor capsid protein(MCP)を直接認識します。MCPが結合するとAvs7が大きく構造変化し、hostのEF-Tuも取り込みながらtetramerを形成してnucleaseを活性化します。

さらに13種類のAvs familyを調べると、MCPだけでなくportal、tail nozzle、tail tube、tape-measure protein、DNA polymerase、helicaseなど、それぞれ異なるphage proteinを監視していました。

つまり細菌は個々のphageを丸暗記しているのではなく、「phageである限り変えにくい構造部品」=core phage proteomeをpatternとして認識しているようです。

先ほどのVIPRがRNA sequenceを使ったprogrammable recognitionだとすれば、こちらはprotein structureを使ったpattern recognition。細菌の抗ウイルス免疫にも、複数の異なる認識原理が存在しています。

6品目:食事中のarginineが「codon」を通じてMHC class Iと免疫を変える

Cell

Amino acidの量が変わればmetabolismが変わる、というのはよく知られています。今回の研究が面白いのは、arginine量の変化をtranslation machineryがcodon単位で読み取っている点です。

Arginineが不足すると複数のarginyl-tRNAが減少し、MHC class I mRNA上の特定のarginine codonでribosomeがstallします。その結果、mRNA量があるにもかかわらずMHC class I proteinが減り、antigen presentationとCD8 T-cell killingが低下します。

さらに、arginine codonをsynonymous codonであるAGGへ置き換えると、ヒト細胞ではこのtranslation blockを部分的に回避できます。「synonymous mutation=silent mutation」とは限らないことを、栄養環境との関係からきれいに示しています。

Mouse modelではarginine availabilityを高めることでMHC-Iが増え、colorectal tumorigenesisやinfluenza、SARS-CoV-2 infectionのoutcomeが改善しました。ただし、これは現時点では主にマウスでの結果であり、「arginineを摂取すればヒトのがんや感染症が治る」という意味ではありません。

それでも、食事 → amino acid → tRNA → codon → protein → immunityという情報の流れは非常に印象的です。

7品目:自然界に存在しない転写因子を作ってCAR-Tを強くする

Cell

これまでCAR-Tの機能を改善するには、自然界に存在するtranscription factorの中から有望なものを探すのが一般的でした。今回の研究では発想を変え、自然のtranscription factorをdomain単位に分解して組み直すというDESynR(domain recombination)strategyが開発されました。

まず24種類のAP-1 transcription factorをN-terminal domain、bZIP domain、C-terminal domainへ分解し、組み合わせることで13,824種類もの人工AP-1を作製しました。

これらをhuman CAR-T cellへ導入して繰り返しtumor cellで刺激すると、多数のsynthetic TFがnatural AP-1を上回りました。なかでもJUN-FOS-BATFという、自然界には存在しないdomain combinationは、長期間の刺激後もcytotoxicityを維持し、mouse tumor modelでも優れたtumor controlとpersistenceを示しました。

興味深いことに、これらのsynthetic TFは全く新しいDNA配列へ結合するわけではありません。natural AP-1とほぼ同じgenomic siteへ結合しながら、exhaustion、cytotoxicity、stemnessなどのgene programを異なるバランスで動かします。

先週紹介した「AIで進化しやすいproteinを先に設計する」研究とも通じます。自然進化が作った完成品をそのまま使うのではなく、自然が使ってきた部品を再配置して、自然進化では到達しなかった機能を探索する時代になってきました。

Science

Germline EGFR T790M mutation and lung cancer risk

EGFR T790Mといえば、EGFR inhibitorに対するdrug resistance mutationとしてよく知られています。しかし、このvariantをgermlineで生まれつき持っている人もいます。

今回、337万人を超えるgenotype dataを解析したところ、germline EGFR T790Mは約15,850人に1人存在し、lung cancerとの強いassociationが認められました。報告されたodds ratioは25.18で、調べられた他の17種類のがんでは有意なassociationは見られませんでした。

さらにgenetic ancestry、IBD、haplotypeを追跡すると、このvariantは米国南部、特にSouthern Appalachian populationに濃縮しており、約200~225年前のfounder eventにまでさかのぼりました。その後、米国内の人口移動とともに複数のancestry groupへ広がった歴史までgenomeから再構築されています。

一つのrare variantから、分子腫瘍学 → 遺伝性疾患risk → population genetics → 約200年前の人口史までつながっていく、Scienceらしいスケールの大きな研究です。

今週のまとめ

今週は、扱っている対象こそ大きく異なりますが、

「生命は情報をどのような形で保持し、どう読み取り、どう機能へ変換しているのか」

という問いが多くの論文を貫いていました。

タンパク質の配列ではなく構造を読んで未知のGPCR-like proteinを発見する。巨大RNA machineがguide RNAを読んでmRNAを書き換える。VIPRはDNAを1塩基ずつ飛ばして読み、細菌のSTAND receptorはphage proteinの構造を読み取る。さらに細胞はarginine量をtRNAとcodonを介して免疫へ変換し、人間はnatural protein domainを組み直して新しいcell stateまで作れるようになってきました。

そして最後には、一つのDNA variantに残された情報から200年以上前の人類集団の歴史まで読み解けます。

今週のCNSカフェは対面ではありませんが、山梨からの「オンラインCNSカフェ」として、気になった論文があればぜひ眺めてみてください。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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