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金曜CNSカフェ:今週のおすすめメニューRISC形成、代謝物接着剤、水分感知、老化、転移、抗ウイルス機構まで

  • 22 時間前
  • 読了時間: 8分

今週はNature誌とScience誌から気になった論文を取り上げ、金曜CNSカフェを開催しました。

今回は、シャペロンによるRISC形成、内在性代謝物による分子接着、生体分子凝縮を介した水分感知、STINGの変異–機能マップ、リソソーム老化、転移巣形成、細菌の抗ウイルス酵素、そして酵母による抗がん剤生産を紹介しました。

今週の論文に共通するのは、細胞が周囲や内部の状態をどのように感知し、それを構造変化、代謝制御、遺伝子発現、免疫応答へ変換するかという点です。

それでは、今週のおすすめ8品です。

RNA誘導サイレンシング複合体RISCは、Argonaute(AGO)タンパク質とsmall RNAから構成され、標的mRNAの分解や翻訳抑制を担います。しかし、成熟したAGOではRNA結合溝が閉じているため、大きなsmall RNA duplexがどのように装填されるのかは十分に分かっていませんでした。

この研究では、AGO、HSP90、p23からなるAGO maturation complex(AMC)が単離され、その構造がcryo-EMで解析されました。AMC中では、AGOのNドメインとPAZ–MID–PIWIモジュールが大きく離れ、HSP90二量体の両側に固定されています。その結果、small RNA duplexを受け入れられる大きな正電荷の溝が形成されます。

さらに、RNA duplexは単にAGOへ装填されるだけではなく、AGOの正しい折りたたみを誘導するchaperone-like cofactorとして働いていました。5′末端リン酸を持つ二本鎖RNAはAGO foldingを促進しましたが、一本鎖RNAでは十分な効果が見られませんでした。

シャペロンがAGOを開き、small RNA duplexがAGOを折りたたむことで、活性型RISCが完成するという仕組みです。siRNA医薬品の長さや末端修飾を設計する上でも重要な知見になりそうです。

分子接着剤は、通常は弱いタンパク質間相互作用を安定化し、新しい複合体機能を生み出す低分子として知られています。これまでは植物ホルモンや人工的な医薬品での例が中心でしたが、この研究では、細胞内で自然に作られるプリンヌクレオチドが分子接着剤として働くことが示されました。

プリン生合成の律速酵素PPATは、阻害因子NUDT5と複合体を形成すると活性が抑えられます。AMPなどのプリンヌクレオチドはPPATとNUDT5の界面に入り込み、両者を接着するmetabolite glueとして働きました。

細胞内のプリン量が増えると、プリンヌクレオチドによってPPAT–NUDT5複合体が形成され、de novoプリン合成が抑制されます。逆にプリン量が不足すると複合体が解離し、プリン合成が再開します。

また、古くから抗がん剤や免疫抑制薬として使われているチオプリンも、同じPPAT–NUDT5複合体をより強く接着することが示されました。代謝物自身が自らの合成量を感知し、タンパク質間相互作用を介して生合成経路を調節する新しい栄養感知機構です。

植物細胞は、乾燥や塩ストレスによる水ポテンシャルの低下を迅速に感知しなければなりません。しかし、水分子の利用可能性そのものを細胞がどのように直接感知するのかは明らかではありませんでした。

この研究では、SAMドメインを持つタンパク質SAM8が、水ポテンシャルの低下に応答して核内凝縮体を形成することが示されました。通常条件ではSAM8は強く水和されているため核内に拡散していますが、水分不足になると水和層が弱まり、タンパク質間相互作用が優位になって凝縮が始まります。

SAM8凝縮体は、RNA export factorであるALYファミリーやEIF4A3を選択的に取り込みます。これによってmRNAの核外輸送が抑制され、mRNAが核内に保持されることで、細胞全体の翻訳プログラムが再編成されます。

sam8欠損植物では高浸透圧条件下での発芽や成長が低下し、凝縮できないSAM8変異体ではこの表現型を救済できませんでした。凝縮体形成が単なる観察上の現象ではなく、植物の乾燥耐性に必要な生理機構であることが示されています。

STINGは、細胞質DNAを感知するcGAS–STING経路の中心分子であり、I型インターフェロン産生、炎症、がん免疫、非典型オートファジーなどを制御します。一方、STINGのどのアミノ酸がどの機能を調節しているのかは、全体像が分かっていませんでした。

この研究では、deep mutational scanningを用いて、STINGのほぼ全ての1アミノ酸置換が解析されました。その結果、自己活性化変異、cGAMP感受性を高める変異、機能を失わせる変異が、既知の疾患変異部位だけでなく、膜貫通領域、connector、ligand-binding domain、oligomer interfaceなど広範囲に分布していました。

代表的なhyperactive変異のcryo-EM構造からは、異なる変異がそれぞれ別の方法でSTINGのactive-like conformationを安定化することが示されました。

さらに、一部の変異では、インターフェロン誘導とLC3 lipidationによる非典型オートファジーが分離されました。STINGは単一のオン・オフスイッチではなく、異なる出力を個別に調整できる多層的な免疫制御装置であることが分かります。

Atlas of lysosomal aging reveals a metabolite signature shared with lysosomal storage disorders(Science)

老化に伴う細胞変化は、遺伝子発現やエピゲノムの解析から広く研究されています。一方、個々のオルガネラ内部でどのような代謝変化が起きるのかは、技術的に解析が難しい課題でした。

この研究では、マウスの複数組織からリソソームを迅速に精製し、代謝物と脂質を解析することで、リソソーム老化アトラスが構築されました。老齢リソソームでは、glycerophosphodiesters(GPDs)とcystineが特異的に蓄積していました。

この変化は脳、心臓、骨格筋、白色脂肪組織で見られ、複数系統のマウス、ラット、アカゲザルでも保存されていました。また、GPDとcystineは若齢から老齢まで直線的に増加し、その量から暦年齢を高精度に予測できました。

興味深いことに、これらの代謝物はBatten病やcystinosisなどのリソソーム蓄積症でも蓄積します。正常老化と小児の遺伝性リソソーム疾患が、同じオルガネラ代謝物シグネチャーへ収束する可能性があります。

カロリー制限は心臓と筋肉ではGPD蓄積を抑えましたが、脳では効果が見られませんでした。抗老化介入の効果が臓器ごとに異なることも示されています。

Spatiotemporal multiomics uncover tumor ecosystem dynamics during metastatic colonization(Science)

がん転移では、原発巣を離れた腫瘍細胞が別の臓器へ到達しても、その大部分は免疫系に排除されます。しかし、ごく少数の細胞は生き残り、休眠した後に再び増殖して致死的な転移巣を形成します。

この研究では、肺転移の初期からmacrometastasis形成までの9段階を、空間トランスクリプトーム、single-cell RNA sequencing、クロマチンアクセシビリティ解析で追跡しました。

肺へ到達した腫瘍細胞の多くは、好中球やNK細胞によって排除されました。一方、生き残った一部の細胞は一時的にPhgdh^high状態へ入り、免疫細胞の少ないニッチを形成しました。

PHGDH活性の上昇によってone-carbon metabolismが促進され、S-adenosylmethionineが増加します。その結果、H3K27me3が増え、Ccl2やCxcl10などの炎症性chemokine遺伝子が抑制されます。腫瘍細胞は代謝変化とエピゲノム変化を利用し、免疫細胞を呼び寄せない環境を作っていました。

その後、CX3CR1^highマクロファージが転移ニッチへ集まり、IGF1–IGF1Rシグナルを通じて休眠腫瘍細胞の再増殖を促進します。転移成立には、初期の免疫回避ニッチと、後期の増殖支援ニッチという二段階の環境形成が必要でした。

細菌は、バクテリオファージに対抗するため多様な防御系を持っています。この研究では、defense-associated reverse transcriptaseであるDRT4が、通常の逆転写酵素とは全く異なる機構で抗ウイルス応答を行うことが示されました。

DRT4は、一本鎖DNAを合成するpolymerase活性、DNAを3′→5′方向に分解するexonuclease活性、そしてG残基でRNAを切断するRNase活性という三つの酵素活性を持っていました。

通常時にはDNA合成とDNA分解が釣り合っているため、DRT4は不活性な状態に保たれています。ファージ感染によってdGTPやdATPが増えると、長い一本鎖DNAが合成され、polymerization pocketから押し出されます。

DNAが外れ、dGTPが活性部位に残った状態になると、DRT4六量体の二つの三量体間に回転が起こり、新しいRNA cleavage siteが形成されます。活性化したDRT4はファージRNAだけでなく宿主RNAも切断し、細胞を休眠状態へ移行させることでファージ増殖を停止させます。

一つの酵素がDNA合成量を感染センサーとして使い、構造変化によってRNA分解酵素へ切り替わる巧妙なabortive infection機構です。

Enabling sustainable supply of the essential cancer medicines etoposide and teniposide in yeast(Science)

エトポシドとテニポシドは、肺がん、白血病、脳腫瘍などの治療に使われる重要な抗がん剤です。しかし、現在の供給は、絶滅危惧植物Sinopodophyllum hexandrumから前駆体を抽出し、多段階の化学合成を行う方法に依存しています。

この研究では、podophyllotoxin型lignanの複雑な生合成経路がSaccharomyces cerevisiaeへ再構築されました。酵母には45種類の異種酵素が導入され、60か所以上の遺伝子改変が行われています。

特に、これまで欠けていたC-4位のglycosylationを担うUGT709AX1が同定されたことで、エトポシドの直接前駆体である4′-DMEPI-4-O-Glcの生産が可能になりました。

従来法では植物が十分な前駆体を蓄積するまで5年以上かかり、10段階以上の化学変換が必要でした。今回の方法では、酵母を3日間発酵させて直接前駆体を作り、1段階の化学反応でエトポシドとテニポシドへ変換できます。

難しい立体選択的反応を酵素に任せ、最後の最小限の変換だけを化学合成で行うことで、天然物医薬品の供給をより持続可能にする研究です。

今週のまとめ

今週の論文では、細胞が分子や環境の変化を感知し、それを具体的な応答へ変換する多様な仕組みを取り上げました。

RISC形成では、HSP90がAGOを開き、small RNA duplexがAGO foldingを誘導します。プリン代謝では、ヌクレオチド自身が分子接着剤となって生合成を抑制します。植物では、SAM8が水和状態の変化を凝縮体形成へ変換し、RNA輸出を制御します。

STINGは、わずか1アミノ酸の変化によって免疫シグナルの強さや出力を多様に組み替えます。リソソームでは、GPDとcystineの蓄積が老化の進行を反映します。転移細胞は代謝とエピゲノムを変化させて免疫から隠れ、その後マクロファージの助けを受けて再増殖します。

細菌のDRT4はDNA合成を感染センサーとして利用し、RNA切断へ切り替わります。一方、合成生物学では、複雑な植物天然物経路を酵母へ移植することで、必須抗がん剤をより安定して供給できる可能性が示されました。

今週の研究からは、生命現象を理解する上で、分子の量だけでなく、構造、局在、凝縮状態、代謝物、時間、周囲の細胞との関係を同時に見ることの重要性が感じられました。

今週も、分子機構から老化、がん、免疫、医薬品生産まで、生命科学の広がりを味わう時間となりました。

 
 
 

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