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研究成果:ニワトリIMPACTタンパク質のAncientドメインの立体構造を明らかにしました

9月22日
読了時間: 4分

このたび、西野研究室で進めてきたニワトリ由来IMPACTタンパク質の構造研究が、MDPIの学術誌 Crystals に掲載されることになりました。本研究は、2023年に修士課程を修了した井戸海来さんを中心に進められたもので、論文タイトルは“Crystal Structure of the Ancient Domain of Chicken IMPACT Reveals an Evolutionarily Conserved Candidate Functional Surface in the IMPACT/YigZ Family”です。

今回、私たちはニワトリのIMPACTタンパク質が持つ Ancient domain(Ancientドメイン) の結晶構造を、2.0 Å(オングストローム)という高い分解能で決定しました。


IMPACTとは?

IMPACTは、細胞がアミノ酸不足などのストレスを受けた際に働くタンパク質で、タンパク質合成の調節に関わるGCN2という酵素の働きを制御することが知られています。

真核生物のIMPACTには、大きく分けて RWD domain と Ancient domain という2つの領域があります。

このうちAncient domainは、その名前が示すように非常に古くから存在していると考えられる領域で、真核生物だけでなく、細菌や古細菌にも類似したタンパク質が存在します。

しかし、哺乳類や鳥類などの後生動物(metazoan)に由来するIMPACTのAncient domainについては、これまで結晶構造が報告されていませんでした。


ニワトリIMPACTのAncientドメインを結晶化

今回、ニワトリIMPACTのAncient domainを大腸菌で発現・精製し、タンパク質結晶を作製しました。

Photon Factoryの放射光施設を用いてX線回折実験を行い、その立体構造を2.0 Å分解能で決定しました。

明らかになった構造は、複数のαヘリックスとβシートからなるコンパクトな構造を形成しており、これまでに報告されている酵母や細菌の関連タンパク質とよく似ていました。

さらに、細菌、古細菌、真核生物のIMPACT/YigZファミリーを比較すると、周辺のドメイン構成には違いがある一方で、Ancient domainそのものは共通する構造コアとしてよく保存されていることが分かりました。

添付のGraphical Abstractでは、ニワトリIMPACT、好熱菌YigZ、古細菌由来YigZの構造を重ね合わせています。中央でよく重なる部分がAncient domainであり、真核生物ではRWD domain、細菌・古細菌の一部ではACT-like extensionが付加されています。


機能に関わる可能性のある「保存された表面」

今回の解析でもう一つ重要だったのは、Ancient domainの表面に、異なる生物種の間でよく保存された領域が見つかったことです。

その一つが DDGE motif と呼ばれる酸性アミノ酸の並びで、もう一つが Ser、His、Glu、Argからなるpolar quartet(極性残基カルテット)です。ニワトリIMPACTでは、それぞれ S184、H217、E241、R266 に相当します。

興味深いことに、これらの残基はアミノ酸配列上で保存されているだけでなく、立体構造上でもほぼ同じ場所に集まっていました。

過去の研究では、この周辺領域が核酸や小さな陰イオンと相互作用する可能性が提案されています。今回のニワトリIMPACTの構造でも、この保存された表面の近くに塩化物イオンが観察されました。

ただし、現時点では、この領域が実際にどのような生理的分子と結合するのか、あるいは酵素活性を持つのかまでは分かっていません。

今回の成果は、Ancient domainの機能を今後実験的に検証するための構造的な基盤を提供するものです。


生物進化を越えて残された共通構造

今回の研究で特に興味深いのは、真核生物、細菌、古細菌という大きく異なる生物群においても、Ancient domainの基本構造がよく保存されていることです。

一方で、その周囲には、生物群によって異なるドメインが付加されています。

つまり、Ancient domainはIMPACT/YigZファミリーの中で長い進化の過程を通じて保たれてきた共通の構造コアであり、その周辺にそれぞれの生物群に応じた機能が付け加えられてきた可能性があります。

今回得られた構造を出発点として、今後は保存されたアミノ酸を変異させた実験や、DNA・RNA、金属イオンなどとの相互作用解析を進め、Ancient domainがどのような役割を担っているのかを明らかにしていきたいと考えています。


ニワトリIMPACTとIMPACT/YigZファミリーの構造比較

AlphaFoldで予測したニワトリIMPACT、HaYigZ、MoYigZの構造と、好熱菌 Thermus thermophilus YigZの結晶構造(PDB 2CVE)を重ね合わせた。真核生物、細菌、古細菌でAncient domainの構造が共通して保存されている一方、真核生物ではRWD domain、TtYigZおよびMoYigZではACT-like extensionが付加されている。拡大図には保存されたDDGE motifとpolar quartetを示した。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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