top of page

構造生物化学実験・3日目

  • 執筆者の写真: nishinotatsuya
    nishinotatsuya
  • 10月31日
  • 読了時間: 3分

実習も折り返し地点となる3日目。

本日も昨日に引き続き、実習室とPC室に分かれて実験を行いました。

ree












昨年までは、実習室とPC室を交互に移動しながら4日間の実習を行っていましたが、今年は2日連続でウェット実験またはドライ実験を行う形式に変更しました。また、TAもウェット担当とドライ担当を分けず、同じ班の学生を両方で担当することで、学生とのコミュニケーションを深め、一貫性のあるサポート体制を築いています。

既に実習も3日目を迎え、TAと学生の間にも打ち解けた雰囲気が生まれ、フランクに会話や議論が交わされていました。

ree













ウェット実験:アフィニティータグの除去と再精製

実験室では、昨日精製したHisタグ付き組換えタンパク質を用いて、TEVプロテアーゼによるタグ切断反応と再精製を行いました。この工程は、アフィニティ精製に使用したタグを除去し、その後の生化学実験や構造解析に直接利用できる高純度サンプルを得るための重要なステップです。こうしたタグ除去操作は実際の研究室でも日常的に行われており、将来卒業研究で役立つ内容でもあります。


各班では、反応後のサンプルをSDS-PAGEで分析し、TEVプロテアーゼによる切断の有無や再精製後の目的タンパク質の純度を確認しました。これまで他の研究室の実習ではTAが電気泳動を代行していましたが、今回は学生一人ひとりが自分のサンプルをローディング。最初は手元が震える学生もいましたが、2日目の実験となる今日は手つきもずいぶんと慣れ、スムーズに操作できていました。

ree










実際にタグが除去されたことが確認でき、部位特異的プロテアーゼの有効利用法について学ぶことができました。


ドライ実験:TEVプロテアーゼ複合体の分子シミュレーション

PC室では、TEVプロテアーゼ認識配列単独およびTEVプロテアーゼ認識配列とTEVプロテアーゼ複合体の2種類の分子シミュレーションを行いました。

この内容は今年から新たに導入されたテーマです。


夏休み前から告知やアンケートを実施し、学生全員のノートPCにDiscovery Studioの導入をすすめてきました。

多くの学生は問題なくインストールできましたが、一部では不具合が生じ、個別にメールや対面で相談・対応を行いました。そうして準備を整えた上で、いよいよ自分のPCで本格的な分子動力学シミュレーションを実行しました。


昨年までは仮想デスクトップ環境での計算でしたが、今年は学生のPC性能が向上しており、想定よりも短時間で計算が終了しました。(CPUコア数に応じて並列計算が行われるため、計算効率が大幅に向上しています。)


まず、TEVプロテアーゼ認識配列ペプチド単独の構造を最適化し、10ピコ秒の分子シミュレーションを実施して柔軟性を確認。軽量なペプチド系のため、計算は数分で終了しました。計算資源に余裕のある学生は、さらに100ピコ秒の長時間シミュレーションも行いました。


得られたトラジェクトリーを解析すると、単独ペプチドでは大きな構造変化が見られたのに対し、プロテアーゼとの複合体ではほとんど動かず、特異的な認識機構による構造の安定化を確認できました。また、プロテアーゼ側でも二次構造の維持と柔軟性の分布を比較することで、タンパク質構造の安定性を保つ仕組みに迫ることができました。

ree












このようにウェット実験で確認した「タグ切断」という現象を、ドライ側で分子レベルから理解する貴重な体験となりました。


ウェット実験をタンパク質の性質を実感し、ドライ実験でタンパク質の構造を目で見て理解する

両パートを通じて、学生たちはまさに「構造生物化学の現場」を体感しています。


来週は、ウェットとドライを入れ替えて実習を行います。

これにより、全員が両方の実験を体験し、タンパク質の構造・機能を多角的に理解できるように構成しています。

 
 
 

コメント


Tokyo University of Science

  • Facebook Clean Grey
  • Twitter Clean Grey
  • LinkedIn Clean Grey

© 2020 by Tatsuya Nishino

bottom of page