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2025年度生化学川柳第九週目優秀川柳賞/2025Biochemistry Haiku prize week9

  • 執筆者の写真: nishinotatsuya
    nishinotatsuya
  • 6月18日
  • 読了時間: 3分

先週より、中間試験後の後半講義がスタートしました。


今回の講義では「ヌクレオチドと核酸」について学びました。ヌクレオチドは、塩基糖(ペントース)リン酸基の3つから構成される分子で、DNAやRNAといった核酸の基本単位となるだけでなく、エネルギー通貨(ATP)や補酵素(NAD⁺)としても生体内で重要な役割を担っています。

塩基にはプリン塩基(アデニン、グアニン)とピリミジン塩基(シトシン、チミン、ウラシル)があり、構造中に含まれる窒素や酸素原子によって水素結合を形成できるため、核酸の相補的な塩基対形成を可能にしています。プリン塩基は二環構造、ピリミジン塩基は単環構造を持ちます。

糖はRNAではリボース、DNAではデオキシリボースが使われ、それぞれ5つの炭素原子を持つ五員環構造です。リン酸基は5’位に結合し、隣接するヌクレオチドとホスホジエステル結合を介して連結することで、長いポリヌクレオチド鎖が形成されます。

こうしてできたポリマーがDNAやRNAで、私たちの遺伝情報の本体です。DNAは通常二重らせん構造をとり、塩基の水素結合によって二本の鎖が逆平行に並んでいます。塩基の並び(配列)がタンパク質のアミノ酸配列を決定する情報となるのです。

しかし、DNAは常に安定とは限りません。紫外線などの外的要因によって損傷を受けることがあります。たとえば、チミン同士が隣接していると紫外線照射によりチミンダイマーが形成され、DNAの複製や転写に支障をきたすことがあります。

以下の図は、紫外線によりチミン塩基が二量体(ダイマー)として架橋された状態を示したものです。



これらの損傷は放置すれば変異の原因となりますが、私たちの細胞にはそれを修復する酵素が備わっています。そのひとつがT4エンドヌクレアーゼVで、チミンダイマーを認識し、該当部位を切断して除去した後、正しい塩基を補填・修復します。以前のブログでも紹介したように、私の研究室ではこの酵素の立体構造の原始モデルを保持しており、研究の一端を担っています。

T4エンドヌクレアーゼVによる修復過程では、損傷部分に対してアデニン塩基がフリップアウト(二重らせんから飛び出す)し、そののちに切断・修復が行われます。

詳しくは、PDB-101のこちらの記事もご覧ください。



























さて、先週の優秀川柳は以下の語句です。


4文字が 僕の全てを 決めている

らせん型 A B飛んで 急にZ

人間の 月まで届く 核酸よ

別れても アニーリングで 復縁だ

ダイマーで なりたくないな キャンサーに


来週は「DNAを基盤とする情報技術」について学びます。

PCRやクローニング、ゲノム編集など、DNAを使った現代の分子生物学の技術に触れていきます。

どうぞお楽しみに。

 
 
 

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