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2025年度バイオインフォマティクス川柳・第四週目優秀作品

  • 執筆者の写真: nishinotatsuya
    nishinotatsuya
  • 10月22日
  • 読了時間: 2分

先週は構造バイオインフォマティクスを学びました。


これまで配列を扱ってきましたが、生体分子は実際には立体構造を形成することで機能を発揮します。DNAは二重らせん、RNAはtRNAやrRNAのような複雑な折れたたみ構造をとり、タンパク質はアミノ酸配列が折り畳まれて三次元構造を形成することで、酵素や転写因子といった多様な機能を果たします。


翻訳されたポリペプチド鎖は速やかに局所的な二次構造(αヘリックスやβストランド)を形成し、それらがさらに組み合わさることで高次の構造を作り上げます。しかし、一次元の配列と異なり三次元構造の比較ははるかに複雑です。そのため解析では、アミノ酸の主鎖にあるキラル炭素や、核酸であればリン酸骨格や塩基の位置といった特徴点を基準にします。また、膨大な情報量を効率よく扱うため、タンパク質では二次構造をベクトル化して比較する手法も用いられています。


さらに、講義ではラマチャンドランプロットによる二面角の分布解析や、PDB(Protein Data Bank)を利用した立体構造データの参照について学びました。構造比較の際には、α炭素間距離を用いたRMSD(Root Mean Square Deviation)によって類似度を定量化する方法や、SCOPやCATHといったデータベースを利用した構造分類も紹介しました。


さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。

-一行に 生命の謎が 潜んでる

-α巻き βで支える 生命美

-折れたたみ 偶然じゃない 必然だ

-構造を 予測できたら ハッピーね

-1Åの ズレにも宿る 構造差


AlphaFoldの例

以下の図は、構造予測プログラムAlphaFoldの原理を報告した論文からの抜粋です。AlphaFoldでは、配列比較(MSA)と構造モデリングにおけるコンタクトマップ(近接残基の関係を示す図)を組み合わせることで、アミノ酸配列の保存性と立体構造の関係を効率的に解析します。


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個々のアミノ酸を逐一比較するのではなく、マップを利用することで特徴抽出と検証が容易になり、予測精度が飛躍的に向上しました。このように構造情報を統合的に扱う手法が確立されたことは、構造生物学とバイオインフォマティクスの大きな進展であり、研究者たちがノーベル賞を受賞するに至った大きな理由の一つです。


来週はゲノム解析を学びます。ある生物の遺伝情報すべてがゲノムにコードされていることから、この膨大な情報をいかに効率よく抽出し、機能や進化の理解につなげるかは現代生物学の大きな課題です。基礎から応用まで、しっかり学んでいきましょう。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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