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2025年度バイオインフォマティクス川柳・第六週目優秀作品

  • 執筆者の写真: nishinotatsuya
    nishinotatsuya
  • 11月5日
  • 読了時間: 3分

先週はトランスクリプトームとプロテオームについて学びました。


ゲノムの情報は、いわば図書館の本のように「保管された知識」です。その本をいつ・どれだけ・どのように開くかによって、細胞のふるまいが決まります。DNAの情報は一度RNAに転写され、さらにタンパク質へと翻訳される二段階の制御を受けます。そのため、RNAの転写量やタンパク質の発現量を解析することは、細胞の機能を理解するうえで欠かせません。


講義では、まずトランスクリプトーム解析を取り上げ、マイクロアレイ法による遺伝子発現の比較や、RNA-seqによる網羅的な転写産物解析を学びました。特に、RNA-seqではスプライシングや新規転写産物の検出が可能で、より高精度な遺伝子発現の把握ができることを確認しました。


次にプロテオーム解析として、質量分析(MS)や二次元電気泳動を用いたタンパク質の同定・比較、さらにはタンパク質間相互作用の解析について学びました。これらの手法を組み合わせることで、細胞の「働き」を分子レベルで明らかにすることができます。


さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。

-ゲノム超え 遠い生き物 意外な縁

-忘れない 君がいたこと イントロン

-サンプルの 量で彩る ニューアート

-遺伝子を 距離で分類 クラスター

-君の笑み 動いた心 解析中


最後の川柳に関連して、以下の画像はレオナルド・ダ・ヴィンチ作のモナリサです。


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この作品は、先日ナポレオン三世の王冠盗難事件が報じられたルーヴル美術館に所蔵されています。

実はこのモナリサも、かつて盗難被害に遭ったことがありましたが、幸いにも無事に戻されました。


彼女が本当に微笑んでいるのか。

その問いは何世紀もの間、人々を惹きつけ続けています。口角がわずかに上がっているようにも見え、光の加減や観る角度によって印象が変わります。

開いた口であれば表情を容易に読み取れますが、閉じた唇がかすかに動いたかのような曖昧さが、この作品に永遠の魅力を与えています。


この「曖昧さ」は、生命の情報表現にも通じるものがあります。遺伝子の発現も、単純に「オン」と「オフ」で分けられるものではありません。状況や環境、細胞内の状態によってその強さやタイミングが微妙に変化し、そこに生き物としての「表情」が生まれます。


私たちがモナリサを見て心を動かされるとき、脳内では膨大な遺伝子群が一斉に反応し、シナプスを通じて感情が形成されています。その反応の中にこそ、生命の情報が芸術へと昇華する瞬間があるのかもしれません。




次回はこのクオーターの最終回です。

ゲノム配列に書かれていない情報制御(エピゲノム)、環境中の微生物群(メタゲノム)、そして遺伝子間の関連を可視化するパスウェイ解析について学びます。これまでの知識を総合し、生命システム全体のつながりを見ていきましょう。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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© 2020 by Tatsuya Nishino

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