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2025年度バイオインフォマティクス川柳・第五週目優秀作品

  • 執筆者の写真: nishinotatsuya
    nishinotatsuya
  • 6 日前
  • 読了時間: 2分

先週はゲノム解析について学びました。


ゲノムとは、生物が持つすべての遺伝情報の総体であり、その解読は生命現象を理解する上で欠かせません。講義では、DNAの塩基配列を大規模かつ高速に読み取る次世代シークエンサーの原理を学びました。NGSの登場により、ヒトゲノムのような巨大な配列も短時間で解析できるようになりました。

得られた断片的な配列データは、ショットガン法やペアエンド解析によって再構築され、より完全なゲノム配列が得られます。これらの解析には膨大なデータ処理が必要ですが、現在では自動化されたアルゴリズムが整備され、研究のスピードが飛躍的に向上しています。

さらに、複数の生物間で配列を比較する比較ゲノム解析では、共通して保存された領域や進化的な変化を検出できます。これにより、機能の推定や進化の過程を理解する手がかりが得られることを確認しました。


さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。

-NGS (N)長い(G)ゲノムも(S)速攻で

-シングルか ペアかの選択 人生も

-終止コドン TAG(タグ)付けされたら 終了だ

-居眠りの 遺伝子発現 制御したい

-遺伝子を 比較して知る 進化の輪


今週の話題論文:ハダカデバネズミと長寿の秘密

以下の図は、今月の Science に掲載された論文より抜粋したものです

この研究では、長寿命で知られるハダカデバネズミの寿命の秘密に迫るため、DNA修復に関わる酵素cGASに着目しました。ヒトとハダカデバネズミのcGASを比較したところ、4つのアミノ酸置換が見つかりました。これらをヒトcGASに導入したところ、培養細胞でDNA修復活性が向上し、老化の進行が遅れる傾向が観察されました。

さらに、ショウジョウバエでも同様の変異がDNA修復能の向上と長寿命につながることが示され、cGASの構造的安定化が種を超えて保存された仕組みである可能性が示唆されました。修復能向上の鍵は、cGASがDNA損傷後にユビキチン化されにくくなることで分解が抑制され、修復関連タンパク質との結合が促進されるメカニズムが明らかにされています。

このように、比較ゲノム解析と構造解析を組み合わせることで新たな寿命制御の仕組みが見えてくることは、ゲノム研究の広がりを象徴する成果といえるでしょう。

興味がある方は、以下の原著論文および解説をぜひご覧ください。

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次回は、転写(トランスクリプトーム)と翻訳(プロテオーム)に注目し、ゲノム情報がどのように機能として発現するのかを学びます。RNA-seqによる発現解析や、タンパク質の発現量の測定・比較を通して、遺伝情報の「動的な側面」を理解していきましょう。

 
 
 

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Tokyo University of Science

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