2024年度バイオインフォマティクス川柳第二週目優秀川柳
先週は、配列解析の基本であるペアワイズアラインメントを学びました。
自分が関心を持つタンパク質やDNAの配列が判明した場合、その配列がどのような意味を持つかを理解するためには、既存の配列との比較が重要です。配列を比較することで、どの部分が他の生物種と似ているのか、またどの部分が異なっているのかが分かり、さらに、その配列が属する生物種と類似する他の生物種についても洞察を得られます。
また、生物種やその機能が全く分からない場合でも、データベースとの検索によって、そのタンパク質やDNAの由来や機能を推測することが可能です。
しかし、このような検索を高精度で行うには膨大な時間がかかります。検索の効率を上げるためには、1文字ずつ比較するのではなく、複数の文字単位で比較したり、それらのまとまりを辞書的な手法で整理して並べ替えることが求められます。
こうした方法を用いて配列検索を効率化したプログラムが、FASTAやBLASTといったツールです。
授業後の課題では、未知のタンパク質配列をBLAST検索してもらい、そのタンパク質名や生物種を特定するという内容を準備しました。今回の課題では、Caerhabditia elegans(シー・エレガンス)線虫のタンパク質を使用しました。
今週はノーベル賞受賞発表の週でしたが、偶然にも今年の受賞者も線虫を使った遺伝学研究からmicroRNAを発見した研究者たちです。
学生の中には、初めて「線虫」という言葉を耳にした人も多いかもしれません。線虫は体長約1mmの非常に小さな生物ですが、遺伝学や細胞系譜、遺伝子発現制御の研究でノーベル賞を受賞するなど、非常に重要なモデル生物です。
今回ノーベル賞を受賞したVictor Ambros博士とGary Ruvkun博士は、1980年代にロバート・ホロビッツ博士の研究室で同時期にポスドクとして在籍していました。その後、2人は独立した研究室をMITとハーバード大学に設立しましたが、両校はボストン市内で非常に近い場所に位置しています。2人はお互いに線虫の遺伝子発現制御を研究しており、Ruvkun博士は遺伝子をコードするmRNAを、Ambros博士はその遺伝子を抑制するmicroRNAを発見しました。このmicroRNAはヒトでも発見されており、遺伝子発現制御の普遍的なメカニズムの解明に大きく貢献しました。
さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。
BLASTで 気が合う仲間 探したい
配列は スコアをつけて 比較する
エレガンス センチュウどこが エレガンス
ペアワイズ 君のとなりに 僕がいる
生命の 分岐をたどり 謎明かす
以下の図は、ノーベル賞財団に掲載されている受賞者2人の研究内容や受賞理由に関するものです。 興味のある方はぜひご覧ください。
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