2023年度生化学川柳第五週目優秀川柳賞/2023Biochemistry Haiku prize week5
先週はタンパク質の機能について学びました。
私達の体の中では、様々なタンパク質が日々刻々と働いています。
中でも重要なものは、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンです。
私たちが吸い込んだ空気の中から、肺で酸素と結合し、血液循環によって体の隅々まで運ばれていく過程で、ヘモグロビンは酸素を必要とする組織で酸素を放出します。何らかの理由で酸素の供給が滞ると(水中や宇宙空間、高地での酸素不足)、私たちはあっという間に意識を喪失し、酷いときには数分で呼吸と心臓が停止し、死に至ります。
肺と組織の酸素濃度(酸素分圧と呼びます)は3倍程度の違いですが、ヘモグロビンはその違いを正確に検知して酸素との結合と放出を行います。ヘモグロビンのこの能力は協同性と呼ばれており、同一の複合体中のヘモグロビンが酸素との結合を調節しています。協同性は血液のpHや体温、調節因子などによって微妙に変化し、環境の変化に適応します。
標高の高いところでは気圧が低く、酸素濃度が薄いため、ヘモグロビンが組織で酸素を上手く放出できず、息が切れたり、頭痛がします。このような状況に対処するため、私達の体では高地でヘモグロビンと酸素の放出を促す物質が作られています。
スポーツ選手が行う高地トレーニングでは、長期間行うことでこの物質がたくさん作られます。
そして、平地に戻ってもある程度の期間はこの物質が持続するため、通常よりも組織での酸素吸収効率や運動能力が向上が観察されます。
以下の写真は、ヘモグロビン4量体と結合した調節因子(2,3BPG)の立体構造です。ヘモグロビンが酸素と結合した状態はR(緩んだ)状態と呼ばれ、結合していない状態はT(張り詰めた)状態と呼ばれます。ヘモグロビン自体には緊張している感情はありませんが、私たちが両者を比較すると、酸素と結合しているヘモグロビンの方がどことなく広がっている印象を受けます。
さて、先週の優秀川柳は以下の5句です。
–きっとそう あなたとわたしは 低親和
–ヘモグロビン GluからValで 鎌状に
–協同性 一目でわかる ヒルの式
–授業中 名前当てられ T状態
–誰とペア? 私の心は T状態
来週も楽しみにしています。
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